夏目漱石『それから』あらすじ|夏目漱石のおすすめ小説|前期三部作

代助の決断

代助はこれからどうするかぐるぐると悩みます。

そして少しでも前に進めるためにまず縁談を断ることにしました。

実家に行って、嫂に「あの縁談は断ってください」と言います。

嫂は縁談を断ってばかりの代助に「そんなことを言っていたらあなたが気に入るお嫁さんなんかどこにもいないじゃないですか!」と激高します。

その時代助は

「姉さん、私は好いた女があるんです」

と深刻な様子で打ち明けます。

そして父親には会わずに実家を出ます。

代助はこんなことを嫂に言ったからには近いうちに父や兄から呼び出されるだろうと予感します。

その前に三千代に愛を打ち明けようと思い、三千代を家に呼びました。

三千代が来るのを待つ間、家に百合の花を沢山飾ったのです。

三千代を待ちながら甘い香りの中こうつぶやきます。

「今日始めて自然の昔に帰るんだ」

さてついに三千代がやってきました。

三千代は呼ばれた理由をなんとなくわかっていたようで緊張した面もちです。

二人は過去の話をします。

三千代は代助の学生時代の友人の妹とだったわけですが、代助が現在考えてみると、三千代の兄は三千代と代助を結びつけようと考えていたのではないかと思われるのです。

しばらく昔話をした後、代助はとうとう三千代に愛を打ち明けました。

僕の存在には貴方が必要だ。

どうしても必要だ。

僕はそれだけの事を貴方に話したい為にわざわざ貴方を呼んだのです」

三千代は涙をぽろぽろ。

僕はそれを貴方に承知して貰いたいのです。

承知して下さい」

三千代はまたぽろぽろ。

「あんまりだわ」と答えます。

三千代も代助が好きだったのでしょう。

しかしそんなこと平岡と結婚した今になって言われてもしかたがないのです。

三千代「打ち明けて下さらなくってもいいから、何故、何故捨ててしまったのです(なぜ私がお嫁に行く前に結婚を申し込んでくれなかったのです?)」

代助「僕が悪い。堪忍して下さい」

三千代「残酷だわ」

代助「でも僕はそれだけの罰を受けています、あなたが結婚してから三年以上になりますが、僕は独身でいます。家族から何度も結婚を勧められていますが、僕はみんな断ってしまいました。その結果僕と父の間の関係が悪くなるかもしれません。それはあなたから僕への復讐です」

三千代「そんな……私は平岡と結婚してから、いつもあなたに早くお嫁さんをもらってほしいと思っています」

代助はこう答えます。

いや僕は貴方に何処どこまでも復讎して貰いたいのです。

それが本望なのです。

今日こうやって、貴方を呼んで、わざわざ自分の胸を打ち明けるのも、実は貴方から復讎されている一部分としか思やしません。

僕はこれで社会的に罪を犯したも同じ事です。

然し僕はそう生れて来た人間なのだから、罪を犯す方が、僕には自然なのです。

世間に罪を得ても、貴方の前に懺悔する事が出来れば、それで沢山なんです。

これ程嬉うれしい事はないと思っているんです

三千代は代助に「もうあやまらなくて結構、ただもう少し早く言って下さると……」と言います。

代助は「それじゃ僕が生涯黙っていたほうがあなたは幸福だったのですか?」と聞きます。

三千代は「そうじゃないのよ、私だってあなたがそう言ってくださらなければ、生きていられなくなったかもしれないわ」

代助は相思相愛だったことを知ります。

代助が「じゃあ構わないでしょう?」と尋ねると三千代は「でも平岡にすまないわ」言います。

代助が三千代に「三千代さん、正直に云って御覧。貴方は平岡を愛してゐるんですか」「平岡は貴方を愛してゐるんですか」と尋ねると三千代は否と答えます。

代助はこう言います。

「仕様がない。覚悟を極めませう」

その日は代助は三千代を家まで送りました。

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