谷崎潤一郎『細雪』あらすじ

母の二十三回忌 妙子と啓坊 カタリナの近況

まもなく姉妹たちの母親の二十三回忌となります。

なるべく地味にやりたい辰雄ですが、姉妹たちやかつての蒔岡家を知っている人は親の法事にケチるべきではないと非難し両者の間には軋轢があります。

辰雄としては雪子、妙子がまだ嫁に行っていないのを客たちに見られるのも気が重いのです。

母の法事を前にして、最近妙子の挙動がおかしいのです。

板倉が亡くなったあとはしょんぼりしていた妙子ですが、また元気になり、板倉との結婚を決意したころは質素だった服装がまた華美になりました。

また人形制作も仕事場も弟子に譲ってしまったそうで、また洋裁学校も前ほど真剣に通っていないようです。

ある日貞之助、幸子、悦子、女中のお春で観劇に行ったとき、幸子とお春は妙子と啓坊が一緒にいるところを目撃してしまいます。

まもなく幸子は女中のお春から最近啓坊の環境に変化があったことを聞きます。

啓坊は最近勘当されて、彼の乳母だった婆やさんと一緒に家を出て暮らしているというのです。

家は神戸の西宮でそこにしょっちゅう妙子が行っている様子です。

啓坊は遊び人で浪費家、いままでお金がないと母親に泣きついていたらしいのですが、啓坊の母親は先日亡くなってしまいました。

妙子に問いただすと妙子はあっさり奥畑との最近の関係を認めました。

ただ妙子はかつて恋人だった人が苦境にたたされているのをほおっておけないから付き合ってやっているのだ、恋愛ではなく憐憫だといいます。

幸子は啓坊が嫌いな夫の貞之助がこのことを人づてに聞いて知ったらかえって厄介だと思い、自分からうちあけます。

すると貞之助は2,3日後、自分は啓坊が勘当された理由を調べたと幸子に言います。

啓坊は奥畑商店の店員とグルになって店の品物を持ち出していたそうです。

それも今回だけではなく、前にもそんなことが一二編あったけれども、その時は啓坊の母がかばってくれていたそうです。

しかし今度はお母さんがいないし、たびたびのことだったのでついに勘当となったらしい。

貞之助はそんな男と妙子を結婚させられるか、自分たちが賛成でも蒔岡本家がゆるさないだろう。また啓坊は勘当される際にいくらか金をもらっているだろうけど、もしかしたら妙子は啓坊を金づるにしているのではないか? ともかくこんな交際はやめさせなければ……と言います。

幸子たちは義兄の辰雄の開いた地味な法事に満たされないものを感じ、法事の後で姉妹たちだけでささやかな催しをすることにします。

出席者は姉妹たちと富永のおばちゃんとその娘のみ。

余興は妙子の舞や幸子の琴です。

半月前から練習に明け暮れます。

法事の日に二人はカタリナの兄キリレンコに会います。

カタリナは今イギリスにいるそうです。

カタリナはロンドンで保険会社の秘書をしているといいます。

同時に今娘を取り戻す訴訟をしているといいます。

法事の後の宴会は40人ほどいてなかなかにぎやかです。

出席者はかつての使用人や贔屓にしていた大工などでした。

彼らの話題は妹が中国でダンサーやスパイになったとか、儲かるならなんでもやるなどと、姉妹たちの生活とはかけ離れたものでした。

法事と姉妹たちの母をしのぶ催しの後は、鶴子は東京に帰ります。

雪子は東京行きの列車には乗らずそのまま関西に居残ります。

その後、妙子は今まで以上に頻繁に西宮の奥畑の家に行くようになります。

しだいに昼間だけでなく夜も遅くなり家出夕食を食べないのもしょっちゅうになりました。

奥畑ぎらいの貞之助はご機嫌斜めです。

幸子は妙子と啓坊のことは鶴子には話さなかったのですが、貞之助が仕事での上京の折、話しました。

まもなく鶴子から幸子に手紙があります。

鶴子はこのことを聞いて非常にショックを受け、こんな妹がいて恥ずかしいと憤慨しています。

鶴子は、これからは妙子を奥畑との付き合いをやめさせるべきだ、しかしやめろといっても妙子が簡単にやめるわけがない、影でこそこそ付き合うかもしれないから、完全に付き合いをやめさせるために妙子に東京に来るように言います。

さらに鶴子はもし妙子が東京に来れないようなら、妙子を芦屋の家にも置かないでくれ、というのです。

妙子にこのことを話すと、妙子は「うち、本家と一緒に暮らすぐらいなら死んだ方がましや」との答え。

妙子は東京に行くくらいなら、芦屋の家をでて独りでアパート住まいをすると言います。

「こいさん、啓坊の所へ行けへんの?」と幸子が妙子にたずねると啓坊と一緒に住むのはごめんだといいます。

妙子は自分は啓坊を哀れんでいるだけで愛しているわけではない、誤解されると困るから一緒には住まないそうです。

妙子はすぐにアパートを探しに行き、まもなく芦屋の家を出たのでした。

妙子がいなくなってさびしくなった幸子は雪子と映画を見に行ったり、ピアノを弾いたり、お春に琴を教えてやったりします。

妙子がたまに遊びに来ます。

雪子のシミをとるための女性ホルモンの注射のことなどを話しながら、妙子はふとカタリナの話題をだします。

カタリナは英国で社長秘書をしていましたが、その社長と結婚したそうです。

大変お金持ちの男性で、お城のような家にすんでいます。

しかもその社長はまだ35歳で初婚だといいます。

カタリナが日本を発ってまだ10ヶ月。

また娘も夫から取り返すことができたらしい。

カタリナの行動のすばやさに驚く幸子たち、それに比べて雪子には相変わらずいい相手が見つからないし、進歩的な女性のはずの妙子も好きな男性となかなか一緒になれない。

カタリナと比べて自分たちはなんといくじなしだろう、とせつなくなる幸子でした。