谷崎潤一郎『細雪』あらすじ

雪子の縁談4 橋寺 女学生の娘がいる医学博士

また雪子に見合い話があります。

紹介者は美容師の井谷でした。

相手の男性は橋寺という医学博士ですが、今は医師をしておらず、製薬会社の重役をしています。

医学博士の橋寺は写真で見たところ、そこそこ美男子です。

橋寺には、今年女学校2年生(14,5歳)の娘がいますが、可愛らしいよい子のようです。

話のあった3日後にはもう井谷から、今晩日本料理屋で見合いをしないか? という誘いがあります。

今度の見合いの付き添いは貞之助のみでした。

橋寺博士は45,6歳、目鼻立ちの整った男性でいままでの雪子の見合い相手の中では一番外見が立派です。

井谷の知り合いの女性である丹生夫人が、橋寺博士に「死んだ奥さんのことをいつまでもくよくよ考えていらしたってしょうがないじゃありませんか、私がいいお嬢さんを紹介してあげます」とひっぱってきたのでした。

まだ橋寺博士自身はそれほど結婚したいというわけではなく、人に言われて出てきたという感じでした。

紹介者の井谷、丹生夫人と橋寺博士ばかりが盛り上がって雪子はろくに相手と話をしないような見合いでした。

見合いの後、貞之助は丹生夫人から橋寺博士はどちらかというと近代的で華やかな女性が好みだと聞きます。

井谷は雪子は決して陰気な女性ではない、と丹生夫人に熱弁して縁談がまとまるように力を尽くします。

まもなく橋寺博士が井谷、丹生夫人に連れられて芦屋の家にやってきます。

貞之助、幸子、それに悦子も一緒に彼らをもてなします。

雪子は井谷にもっと積極的になるように、と言われていたにもかかわらずあいかわらずはきはきしない様子です。

幸子、貞之助は橋寺博士をすっかり気に入ったのですが、橋寺博士のほうにそれほど熱心な様子が見られません。

貞之助が橋寺博士が重役をつとめる会社をたずねます。

貞之助が橋寺博士が芦屋の家に来た時に、橋寺博士に、妻や姉妹たちがいつもするビタミンB注射に使う薬剤が戦争の影響で手に入りにくくなっているという話をしたのでした。

すると橋寺博士がそれなら自分の会社で使っているものを送ってあげるといいます。

貞之助がそれに感謝しながらも、それには及ばない、自分が取りにいきます、と答えたのでした。

貞之助は橋寺博士の店を訪ねます。

貞之助はその時の従業員の様子から橋寺博士がこの店で実質上一番偉い人であることを知るのでした。

橋寺博士は「この会社は社長はいることはいるけれど、実際はほとんど出社していない。実際は自分が社長の仕事をやっているようなものだ」と言います。

貞之助は橋寺博士のことをより気に入ります。

橋寺博士にぜひ雪子をもらってほしい、ということを書いた丁寧な手紙を書きます。

貞之助は橋寺博士の自宅を訪ね、その暮らしぶりや娘の様子を見てますます橋寺博士が好きになりました。

その後も橋寺親子と蒔岡家は家に招待したり一緒に出かけたりして、縁談は期待が持てそうでした。

それを聞いた幸子はついに雪子にも運が向いてきたと喜びますが、間が悪いことがおこってしまいました。

幸子の留守中に、橋寺博士が芦屋の家に電話をかけ雪子を呼んだのです。

橋寺博士の電話の内容は雪子に「二人で散歩でもしませんか?」というものでしたが、電話が苦手な雪子はただ「はい、あのう」とろくな返事をせずに、最後に「ちょっと差支えがございますで」と断って終わりでした。

まもなく電話があり、それは橋寺博士の紹介者の仁丹夫人からでした。

仁丹夫人によると橋寺博士が大変怒っていて、「僕はあんな因循姑息なお嬢さんは嫌いです。僕はこの縁談はきっぱりお断りします」と言ったそうです。

聞くと橋寺博士が電話をしたけれど、なかなか雪子が出てこない。

散々待たしてやっとでてきたと思ったら、ご都合はいかがですか、と聞いても、はいあのうあのうを繰り返すだけで、イエスだかノーだかさっぱり分からない。

問いつめると、聴き取れないような細い声で、「ちょっと差支えがございますので、……」とそれだけ言って後は一言も言わない。

橋寺博士は癪にさわったからそれきりプッツリ切ってしまったそうです。

またこのような雪子の態度はその日の電話だけではないといいます。

橋寺博士とその娘が蒔岡家と神戸に出かけた際、出征軍人を送る街頭行進が通ったため、他の人たちと遮られてしまい、橋寺博士と雪子が二人きりになりました。

そのとき橋寺博士が雑貨店が目に付いたので、僕、靴下を買いたいんですが一緒に行って見てくれませんか?と雪子に話しかけました。

しかし雪子はただはあ、と言ったきりモジモジシて幸子たちの方を救いを求めるかのように何度も振り返ってみたりして、困ったような顔つきでつっ立ってるだけです。

橋寺博士は憤然として独りでその店に入って買い物を済ませたといいます。

幸子はそれを聞いて落胆します。

貞之助に自分のやるせない思いを訴えますが、貞之助はそれが雪子の性質である、それを

理解しない男性なら雪子の夫になる資格はない、と冷静です。