小説『小虎』第21章 会いたくて(1)

≪前へ    ≪目次≫   次へ≫

次の日その駅に電話をした。

参考書は拾われて、
改札口で預かってくれているという。

私が取りに行くと、
改札口にはあの時とは別の駅員がいて、
参考書を渡してくれた。

家に戻った私は、
母に小虎が何処に住んでいるか教えてくれと頼んだ。

母は自分も知らないと言った。

二郎叔父に聞いても同じ答えだった。

島のオバちゃんは私が転校して間もなく辞めて、
しばらくして亡くなった。

新しいお手伝いさんとは島のオバちゃんのように何でも気軽に聞けるような関係ではなかった。

私はタウンページをつぶさに調べた。

占い、
人生相談と書かれた所を見つけた。

一ページ目は洋風の名前が続いていた。

タロットとか西洋占星術とか書かれている。

住所は街の繁華街だった。

それは飛ばした。

近所に易、
人相、
陰陽道というのもあったが違うだろうと思った。

ページをめくると、
島の住所が出てきた。

島にこのような商売をしている家は意外な程多かった。

すべて祈祷、
霊符、
呪い、
託宣、
占い、
といった似たような事が書いてある。

屋号も、
すべてよく似ていた。

そんな区別のつかない程、
類似した名前の拝み屋があの小さな、
ここよりずっと人家まばな島に十数軒もあるのだった。

私は、
商店街に出掛けた。

クリーニング屋の隣の公衆電話を占領して、
島の拝み屋十数件に片っぱしから電話をした。

ウエストポーチのポケットには小さな大学ノートが入っていた。

ノートには拝み屋の名前と電話番号のリストが書きとめられていた。

電話を取るのは年配の人が多かった。

優しげな女性もいたし、
無愛想でなまっていてよく聞こえない男だったこともあった。

「だれ?」という頼りなさそうな子供の声が受話器から響いたこともあった。

私は電話に出たのが小虎ではないことを確かめると無言で受話器を置いた。

まったく電話を取らない家もあった。

十件目の電話だった。

どちらさまでしょう?
という酔っ払ったような男の声に私が無言でいると、
ばかやろう!
と怒鳴り声が受話器から響いた。

私は慌てて受話器を置いた。

しばらく胸を押さえてどきどきを抑えると、
ふと霊感がひらめいた。

今のは、
例の小虎をいじめている「先生」ではないだろうか?
鬼塚霊術という家だった。

リストの中には鬼塚神術という家もあった。

「鬼塚」というのは島に多い苗字だった。

≪前へ    ≪目次≫   次へ≫