小説『小虎』第21章 会いたくて(4)

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「でも、君、
島に何しに行くの!?
君に島に住む友達や親戚なんかいないだろうに」

私は小さい頃可愛がってくれた、
ばあやさんの墓参り、
と恐る恐る答えた。

当時私はタクシーの運転手とお客の会話なんて
単なる時間つぶしの世間話ということを知らなかった。

大人の言うことには何でも真剣に答えなければいけないと思い込んでいた。

「へえ!
お兄さんいい子だねえ!
ばあやさんきっと喜ぶねえ!」

いつも駅までバスで行く道を途中の島へ渡る橋で右折する。

開通してまだ数年だった橋は、
古びた町とは対極をなすかのようにどこもかしこもぴかぴかだった。

周りの大人達の鬼山氏への批判はこの橋によることが多かった。

あんな過疎化の激しい島にこんな豪華な橋なんか掛けて、
まったく税金の無駄遣いだというのである。

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