小説『小虎』第21章 会いたくて(6)

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窓からぼんやりと光が見える。

家の脇には白い車が止まっていて、
物置が二つ並べられていた

「ついたよ」

タクシーの戸が音を立てて開いた。

私はタクシーを降りようとした。

運転手がまたにこっと笑った。

これはうちのタクシー会社の電話番号、
帰るときはここに電話してね、
と名刺サイズのカードを渡してくれた。

私はトタン屋根の家に向かった。

さびた青いトタン屋根の下は砂壁だった。

所々ツタが生えている。

格子に線が入った窓ガラスからは沢山のユーフォーキャッチャーのぬいぐるみが覗いていた。

窓ガラスには所々に、
白い点々があった。

その点々はシールの裏面のようだった。

家は杉並木に覆われていた。

家には門や塀というものがなかった。

杉並木が門や塀と防風林の役割を果たしているようだった。

家の隣にはボックスカーが置かれている。

車の後ろの窓からは大量のぬいぐるみが見える。

後ろの席には新聞や週刊誌、
漫画雑誌がばらまかれたように大量にあった。

玄関は引き戸になっていた。

玄関脇に、
鬼塚という表札がある。

その脇に木の看板があった。

祈祷、
託宣、
呪い、
鬼塚霊術と黒い墨で書かれている。

玄関には半紙や厚紙の札が大量に貼ってある。

札は一つ一つラップで巻かれていた。

玄関の周りにも取り囲むように無数の札が貼ってあった。

玄関の脇には狸の置物が置かれていた。

大人の背丈ほどのものから豆粒のようなものまである。

その合間を縫うように、
無数の像が置かれている。

地蔵、
観音像、
色鮮やかな中南米風の幼子イエスを抱くマリア像、
中国風の唐子と遊ぶ布袋などである。

古代エジプト風の像まであった。

途中からは物置までは一面お狐様の住処となっていた。

大小さまざまな、
大量のお稲荷さんが並んでいた。

お稲荷さんの中にたまに狛犬がいた。

お狐様はみな赤い涎掛けをかけていた。

涎掛けは何度も雨に濡れて乾いたらしく、
砂でバリバリに固められていた。

どれも大昔から置かれていて何も手入れされていないように見えた。

瀬戸物の像には泥のしみがついている。

全体的に茶色っぽい色だった。

石の像には緑のこけがむしていた。

下水くさい臭いが漂っていた。

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