小説『小虎』第16章 茶畑の中の学校(2)

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「聖コロンバ学園 御茶畑村校」という銘板の門の前でドアが開く。

私と二郎叔父は荷物を抱えてステップを降りた。

僕達も田舎者だけどここは本当に田舎だね、
と二郎叔父がつぶやいた。

二郎叔父に背中を押されて門から続く道をスーツケースを転がしながら進む。

門から続く道の脇は鬱蒼とした緑だった。

道の脇に木を植えたというよりも林の中に道を作ったように見えた。

実際それほど歴史のない学校だったから私の感覚は正しかったのである。

森の中の遊歩道のような道を五分ほど行くと、
茶色いヨーロッパ風の建物が見えた。

学校案内で見覚えのある建築だった。

辺りには誰もいない。

周りを見渡しているとわやわやと若い声が聞こえた

「ジョアンのやつまじ、
うざくね!?」

五人ぐらいの生徒らしき体操服姿の少年達がやってきた。

その内の短い髪をつんつん立たせた一人は正太に似ていた。

私を見るとなんだあこいつトロそうだ、
という意地悪そうな目をした。

私は身を縮めた。

「あのきみ達、
教頭室は?」

二郎叔父は少年に言われたとおりの道を私を連れて進んだ。

小さな下駄箱のある入り口から校舎に入りすぐの部屋に入る。

父と同じ年頃の茶色いスーツ姿の紳士がいた。

部屋の壁はキリスト教関連と教育学の書籍がぎっしりと並んだ本棚に床から天井まで覆われていた。

二郎叔父が、
すみません、
兄が来る予定だったのですが急診で代わりに私が、
と挨拶をした。隣の修道院で作ったという、
えらく美味しい新茶をすすりながら、
二郎叔父と教頭先生はしばらく世間話をした。

まもなく二郎叔父はそれじゃあ僕はこれで、
と帰っていった。

行ってしまう前に私の耳元で、
ぼそっとつぶやいた。

「もし何かあったら、
例えばいじめられたりしたら、
先生とか父さんに言いにくかったら叔父さんに言うんだぞ」

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