小説『小虎』第16章 茶畑の中の学校(8)

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風呂が済むとケンイチとロバートに連れられ寮の部屋に戻った。

金属音とともにドアを開けた。

六畳ほどの洋間には二床のベッドが左の壁を背にして、
並べられている。

ケンイチが奥まで行って窓を開けると外の冷気が伝わってきた。

ベッドの脇の壁と入った手前の壁は
一面作りつけの収納になっていた。

ベッドの脇の棚には一部大きな板がある。

ロバートが大きな板の下の脇から細い二枚の板を引き出すと、
大きな板の上の留め金を外して、
板を下ろした。

板はたちまち小机になった。

奥にはライトもあった。

ロバートがベッド脇の椅子を持ってきて腰掛け、
板の上で書き物をする振りをした。

ケンイチによると勉強室は別にあるけど、
朝の六時から夜の十時までしか使えない。

もっと勉強したい時とか
勉強以外の読書や書き物をしたいときはここでするのだという。

ロバートがベッドを跨いで奥に行った。

そちら側の棚にも大きな板があり、
金具を外して、
同じようなつくりになっていることを見せてくれた。

中途入学の為、
私の部屋は本来二人部屋だったのを一人で使うことになった。

ロバートとケンイチは同じ広さで同じ仕様の部屋に
二人で住んでいるという。

「We are good friend!」
(僕達は仲がいい)
とロバートとケンイチが肩を組んでみせた。

「But sometimes fight」
(だけとたまに喧嘩する)
とおどけた様子で腕組みをしてお互いに背を向けて体を後ろにそらせた。

そんな時は、
といってケンイチが二つのベッドの間にあるカーテンのタッセルを外すと
布の端を引っ張った。

部屋はにわかに二つに間仕切られた。

ケンイチがベッドのマットレスを力を込めて持ち上げた。

マットレスを大きくベッドヘッド側に倒す。

マットレスが足元から上がって、

下は仕切られた収納になっていた。

スーツケースはここに入れたらいいよ、
と教えてくれた。

ロバートとケンイチがまた明日!
と部屋を出て行った。

私は少し寂しくなった。

まもなく風呂あがりの心地よい眠気がどっと襲ってきて、
そのまま寝入ってしまった。

次に気がついたときは顔に朝の光が当たっていた。

ケンイチの、
朝だよ!
早く起きないと遅刻するぞ!
と言う声と激しいノック音が聞こえる。

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