小説『小虎』第28章 エピローグ(1)

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もうじきこの家は取り壊される。

その前に、
すみずみまで映しておきたい。

私は冷え切った体でデジタルビデオを手に、
二階の端から端まで歩き回っていた。

一階から妻と妹の笑い声がする。

降りていくと、
彼女達の手元には昔の写真が散らばっていた。

古い写真を見て妹がそれを懐かしんでいるようだ。

妻だって、
隣町の出身である。

我が家の思い出の写真も彼女の郷愁を呼び起こすらしい。

ドアのベルが、
ダイヤル式電話のような古臭い音をたてた。

妻が、
はあいと返事をしながら出て行った後、
すぐに嫌そうな顔をして私を呼びに来た。

「あなた例のおがみやさんのお友達よ」

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