小説『小虎』第4章 小虎(8)

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それから私と小虎は一緒に動物園に行ったと思う。

幼い時の事で、
霞がかかったような思い出である。

小虎に肩を抱かれて、
こわごわとライオンの檻を覗いたような気がする。
小虎に腰に手を添えらて、
震えながらポニーに乗った記憶がおぼろげにある。

小虎は私の目をじっと見て、
怖くないよ!
男の子だろ!
と兄さんらしく励ましている。

アーモンド形の目は輝き、
愛情に満ちていた。

オレンジ色の形のよい唇から覗く白い歯が
まぶしかった。

私の手を握る手は大きくて
頑丈そうだった。

私の故郷に動物園などない。

誰か大人に連れられて遠出をしたのだろうか?

移動動物園、
もしくはサーカスだろうか?

小虎と一緒に映っている写真でもあれば、
はっきりするのだが見つからない。

ただ白砂神社の十二年祭が迫っていたその日、
竹馬にまたがって、
白羽の矢が取り外された門を仰ぎ見た時、
私は、
小虎のことを親しく思っていたことは確かだ。

私の心の中で小虎は
私の肩をがっしりと抱いていた。

私も真似して小虎の肩に手を回そうとしたが、
背が低いので届かない。

バランスを崩した私は
小虎のわき腹にもたれかかった。

小虎の体温を感じながら安心しきっていた。

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