小説『小虎』第10章 小虎と猫(5)

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良子が大学の時の友達にもらったという福砂屋のカステラを手土産に、
良子に送られて家に帰った。

家の門の前には、
祖母に母に二郎叔父、
島のオバちゃんが勢ぞろいしていた。

私がいないことに気づいた大人たちは家中総出で大騒ぎだったそうだ。

私の同級生に電話したり、
私の行きそうな所を片っ端から探したらしい。

ついに警察を呼ぼうとしたところで、
良子から電話がかかってきたそうだ。

オバちゃんが、
もう!
すぐる君!
オバちゃん誘拐されたんじゃないかと思って、
寿命がちぢんじゃいましたよ!
と涙目で苦言する。

祖母が良子に上がって行くように誘う。

良子は小虎を家に置いてきたから、
と断った。

良子と家に帰るオバちゃんの長い長い影法師を見送った。

影法師が見えなくなった後、
祖母と母と二郎叔父はしばらく向かい合って話し込んでいた。

母がふと、
小虎君と楽しく遊べた?
と私に聞いた。

私はうん!
楽しかったよ!
小虎兄ちゃん昔と違って小さい子みたいだったけど、
絵がうまくて、
猫をサーカスみたいに肩に乗せられるんだ!
と無邪気に答えた。

大人たちはまた顔を見合わせて、
何か言いたげな顔をした後、
私に目線を合わせると忠言した。

「そう……
今度はちゃんと大人に言ってから、
遊びに行くのよ」

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