小説『小虎』第22章 真冬の夜(6)

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門を抜け少し行くと、
校庭に入った。

校舎の一階の左端と体育館風の天井の丸い建物だけあかりがついている。

小虎は体育館と校舎をつなぐ腰の高さの渡り廊下によじのぼり、
中に入った。

私もついていく。

校舎側に廊下を進むと入り口の鍵は開いていたので、
校舎に入った。

小虎は私の肩を組み、
身をかがめた。

私を向き指を口にあて、
しいっのしぐさをした。

あかりのついた部屋の廊下の前を
そろりそろりと通りすぎる。

つれていかれた場所は真っ暗だった。

目が慣れると、
小さなロッカーが並びそれぞれの扉に名札が書かれている。

小虎がぴたりと止まった。

私が呆然としていると、
小虎がロッカーの一つに指さした。

「木田美登利」、
そういえば美登利はこの水産高校に通っていると聞いていた。

小虎が皸だらけの手を美登利の下駄箱の取っ手にそえる。

金属音とともに戸が開く。

深い深い闇の中に小虎が手を差し込んだ。

「あれ!?
ない!」

小虎が初めて声を発した。

私はそうさ、
なんだって美登利の下駄箱なんかにあるっていうんだ!?
と心の中で思った。

小虎は、
ついさっきまでここにあったのに、
とぶつぶつと言っている。

小虎は目をつぶった。

手は合掌している。

その瞑想をする姿はお寺の暗いお堂の中の仏像のような趣があった。

周りがほんのり白い光で包まれているように見えた。

私は冷え冷えとした空気がかえってここちよいと思った。

小虎が目を開けた。

私の手をまた引っ張る。

電灯がともった部屋の前を通ると、
誰かいるのか?
と言う若い男の声が聞こえた。

慌てて紳士マークのある便所にすべりこんだ。

人影が近づいてきたが、
入り口の前で止まり、
また遠ざかっていった。

私達はそろそろと便所から出て、
その後は一目散に校舎から抜け出した。

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