小説『小虎』第5章 祭りの日(1)

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それから四日後の夕べ、
私は父、
母、
二郎叔父と連れ立って、
祭り見物にでかけた。

いつも仕事で忙しく、
めったに私と一緒に外出しない父もいることが
嬉しくてしかたがなかった。

お稚児さんを首になったことなど
百年も前のことのように思われた。

ばねのようにはぜる思いで、
家を出て大通りに出ると、
ちりめんじゃこのようにみっしりと、
露店がならんでいる。

お面や綿飴に金魚、
欲しいものばかりだった。

どれからねだればよいか、
わからない。

ウィンナーを頬張りながら
射的の店に行った。

棚に掛かった紅白の幕に銃口を向ける。

雄牛のように興奮しながら、
西部劇のガンマンになったつもりで
猫のぬいぐるみめがけて発射する。

玉は空しく銃口の5センチメートル先で下に落ちた。

二郎叔父が貸してみろ!
と銃を取る。

黙って猫を睨みながら
二、三度位置を変えた後、
引き金を引いた。

ぱ!と指を離すと、
玉は見事に私が欲しがっていた猫を打ち落とした。

大当たり大当たりという声が聞こえる。

鐘の音が響いた。

周りの人たちが手を叩いて祝ってくれた。

二郎叔父がガッツポーズをしている。

茶髪のお団子頭の派手なはっぴをまとった女の人が
私に戦利品を渡してくれた。

叔母さんとお姉さんの中間ぐらいの年頃で赤い口紅を塗り、
鉢巻を締めていた。

猫のおなかには電池のケースがある。

父も負けてはいられないと、
ドラえもんの人形を狙った。

残念ながら父の腕前は私と五十歩百歩だった。

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