小説『小虎』第13章 弟橘姫入水(2)

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ぷうという音声拡張期の音がした。

幾種類の笛や鈴、
鐘で構成されるお神楽に似た音色が流れた。

緞帳が上がると、
背景には北斎の浮世絵のような
大きな波の絵が描かれている。

お神楽の合間から波の音が聞こえる。

舞台の右袖から二人の黒子が現れた。

そのうち一人が脇に赤茶色い布を抱えている。

それを舞台の左袖に置くと、
舞台中に広げだした。

布は白木の舞台の床を前面と左半分を残して覆った。

黒子たちは置き方が気に入らないらしくしばらく置き方を工夫していた。

布を敷き終わると黒子は舞台袖に引っ込んだ。

かと思うと今度は真四角の帆のような物を三人がかりで掲げて現れた。

それぞれ支柱と両端の部分を一人ずつ支えている。

白いゆったりとしたズボンと筒袖の着物の男達が十人ほど現れた。

頭に白い鉢巻をしている。

皆、
櫂を抱えている。

男達は布の周を囲うように並ぶ。

船をこぐように櫂を動かしている。

舞台の上には即席の船が現れたのだった。

お神楽は止まり波の音が大きくなった。

辺りには波の音だけが広がっていた。

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