小説『小虎』第7章 再会(3)

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私は待合室で犬や猫の生態について書かれた本を読んでいたが、
まもなく飽きてしまった。

色画用紙で作った、
犬や猫の顔の絵が貼られた引き戸を開けたり閉めたりしていた。

戸を開くたびに、
「犬のおまわりさん」の電子音が流れるのが面白かったのである。

スグル君駄目よ!
とオバちゃんが気がついて注意した。

別に構わないさ! とお爺さん獣医が笑った。

私は病院を出た。

赤と青の縞々のポールが回っている。

見上げるとポールの色と同じ色のストライプに囲まれた理容室という看板が見えた。

その下のウインドーの向こうに
水色のケープをつけて散髪してもらっている
私より少し年上の少年がいた。

私はその姿に何故か強く心引かれた。

私は少し歩いて、
理髪店のガラスのドアの前のマットに足を置くと、
ドアが二つに開いた。

そこにはずっと会いたくて仕方なかった、
懐かしい顔があった。

小虎兄ちゃん!
と髪を切ってもらっている彼に近づいた。

おや、
お友達かい、
と床屋さんが顔を上げた。

「小虎兄ちゃん元気になったの?」

ケープから覗いた端正な顔は、
大分短くなった髪でくるまれていた。

首から上だけ出ている様が、
木目込み人形の頭みたいだった。

濃い睫毛に縁取られた瞳は
ガラス玉のように透明感があった。

小虎は私を見ている様子だったが、
何も答えない。

「僕、犬、飼ったんだよ、チワワっていうんだ!
隣の病院で手術するんだよ!」

小虎はじっと私を眺めていたが、
しばらくすると目線をはずし、
持っている本に向けた。

ふんふんと鼻歌を歌いだした。

「小虎兄ちゃんどうして無視するの?」

小虎の鼻歌が大きくなった、
アンパンマン、
アンパンマン、
アンパーンチ!
とぶつぶつ言っている。

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