小説『小虎』第23章 さよなら故郷(2)

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いつものように商店街の停留所で下りて、
家に戻った。

家に帰ると、
母が怒っていた。

なんでも私が出発した次の日に鬼塚から電話がかかってきて、
ご祈祷料が三万円では少なすぎるというのである。

普通は少なくても五万円です、
と言い張ったらしい。

それで少し腹を立てながらも二万円を現金書留で送りつけてやったそうだ。

その後、
私が合格したことを誰かから聞いたらしい。

鬼塚がまた電話してきて
合格したなら謝礼五十万円が必要だという。

父が高校生の息子が頼んだものだから、
高校生のお小遣いの範囲で払えないような金額は払わない、
と反論すると、
払わないなら神罰をあててやるというのである。

「それでママったら恥ずかしいんだけど、
ちょっとおかしくなっちゃったのよ。
夜も眠れなくなっちゃって、
次の朝お父さんにも相談せずに、
決意を固めて銀行に行く所だったの」

そこに偶然にも二郎叔父が現れて、
お義姉さん怖い顔してどこに行くんですか?
まるで何かに取り憑かれているようですよ、
と声をかけた。

そこで、
はと目を覚まして鬼塚氏に五十万振り込むのはやめることにしたという。

「まったく危ない所だったわ!
山口さんの奥さんもよくあんなのと付き合っているわね!」

日頃は少女のようにおっとりふんわりした母が
声を荒げているのを私は幾年振りかに聞いた。

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