小説『小虎』第23章 さよなら故郷(4)

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しばらくたったある朝、
出掛けようとすると妹がお兄ちゃん!
と引き止める。

「庭に島のオバちゃんの幽霊がいたの!」

「そんなまさか?」

「ホントよ。
だけど何だか変なの。
お化粧して、
見たことないくらいお洒落しているの」

兄弟で騒いでいると、
廊下の向こうから父に案内されて、
年配の女性がやってきた。

どっしりとした体型である。

白っぽい着物姿だった。

満月のようにまん丸の顔、
顔の中心でぽこんと盛り上がった、
小山のような鼻。

そこだけ平安美人風のおちょぼ口。

そしてしじみ貝のような奥二重の目。

私はその見覚えのある顔に唖然となった。

その顔は紛れもなく五年前に亡くなった筈の島のオバちゃんだった。

「ワタクシ、
シマの妹のリクでございます」

父によると島のオバちゃんのこの瓜二つの妹さんは
霊能者だという。

オバちゃんに霊能者の妹がいたなんて初めて聞くことだった。

霊能者のリクさんのミミズク型の体つきは
オバちゃんと同じだった。

しかし高そうな着物に
とろんとした緑の宝石の帯留めをつけている。

指にも帯留めとそっくりの石を
くりぬいてつくったらしい指輪を嵌めている。

両手の指は赤くマニキュアされていた。

手からは黒い鰐皮のバッグを提げている。

髪は明るく染められていて、
綺麗に油をつけてお団子にされていた。

蒔絵のかんざしを挿している。

服装についてはいかにも田舎のおばあさんという感じだったオバちゃんとは
随分と違っていた。

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