小説『小虎』第27章 積年の思い (6)

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その後、
私と妻、
ケンイチ、
小虎は島の彼らの家に向かった。

もうだいぶ日は落ちていた。

杉林の中には山小屋風の新しい家が建てられていた。

庭も整理されていて、
大量にあった汚れた像は一体残らず片付けられていた。

比較的大きな、
木肌が見える平屋の家の脇には
バンガロー風の小さな小屋が三つ並んでいる。

一つがケンイチの、
一つが小虎の、
一つが遠方から泊りがけできた信者さんの為の部屋だという。

何とすべての建物はケンイチと小虎がキットを買って自作したものだそうだ。

駐車場の向こうに手押しポンプ式の井戸があることに気がついた。

木の香りのする、
こざっぱりした部屋に案内された。

昔小学校にあったような丸型の石油ストーブがあり、
周りには鉄の柵がめぐらされていた。

小虎がうっかり近寄りすぎないようにだという。

収納にもなるという細い白木をつなげたベンチに
腰掛けるように勧められる。

これもケンイチのお手製だそうだ。

白木のテーブルでお茶を飲んだ後、
てんやものをとって酒盛りが始まった。

しばらくは楽しく私と妻の馴れ初めや、
学校の頃の思い出を語り合った。

「母校が無くなっちゃったなんて寂しいよな!

まあバブルの時に勢いで建てたボンボン学校だからしょうがないのかも……
最後の年の卒業生、
五人だったらしいぜ。

一度ぐらいOB会来いよ!

白砂町校と合同だけど楽しいよ!

ジョアン先生がすごく会いたがってた」

ケンイチの笑顔がふと曇り、
目線が下に向いた。

もしOB会にまた出席しても俺に会ったことは先生や友達に話さないでくれ、
と私に頼む。

私はそれ以上何も言わないことにした。

酔いが回るとケンイチが涙目になってしきりに私に詫びる。

メールを何度もくれたのに無視したりして、
本当に悪かった。

どうしてもお前に連絡できなかったんだ、
と情けない声で繰り返す。

鼻をすする声まで聞こえてきた。

妻の前だし私が困っていると、
小虎が慰めようと思ったのか、
へたくそな踊りを始めた。

めでたいな!
めでたいな!
と叫びながら飛び跳ね、
脚や手を曲げ伸ばしする。

小虎が飛び降りるたびにみしっみしっと木の床が音を立てた。

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