小説『小虎』第9章 スケッチブックの中の友達(2)

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芝生の生え揃った小山のような頭からハミングが立ち昇る。

頭は筋がはっきりとした、
こころもち長い首に支えられていた。

丸首のセーターから覗いたうなじには
渦巻くように産毛が生えている。

小虎は私に白いセーターに覆われた丸まった背中を見せていた。

畳に置かれた大きなスケッチブックに、
青いクーピーを滑らせている。

私は小虎のクーピーの先を覗き込んだ。

ページいっぱいに青い線で構成された漫画が描かれていた。

いがぐり坊主とおかっぱ頭の子供が並んで立っている。

二人ともすっぱだかで万歳をしている。

ばってんのおへその下には、
3の字を倒したような男の子の印を備えていた。

子供達の口元にはパイプから吹かれたような噴出しがそえられていた。

お風呂にはいるよ!
と幼稚園児のような字で、
台詞が書かれている。

二人は手を前にまっすぐ伸ばす。

飛び込み選手の如く画面右下に落ちていく。

ざっぱーん!
というポップ字の効果音が、
威勢よく画用紙に現れる。

小虎は何かに急かされているように水しぶきを付け足す。

少年達の体は胸までで切れていた。

彼らの胸の下には波線が引かれている。

男の子達は頭に布きれを乗せている。

頭の辺りに、
ああいい湯だなあ、
と小虎は書き加えた。

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