小説『小虎』第9章 スケッチブックの中の友達(3)

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小虎は鼻歌の音量を上げる。

水澄ましのようにすいすい手を動かす。

スケッチブックには立派な露天風呂が出現した。

お湯の周りには岩が置かれ湯気が立ち上っている。

二人の少年の他に、
もう一人仲間が増えた。

猿である。

子供離れした筆跡だった。

鳥獣戯画の猿のような躍動感がある。

もう画用紙には隙間はなかった。

小虎はページをめくる。

真っ白な新しいページとなった。

小虎は習字の時に筆を半紙に置くように、
クーピーを画用紙に下ろす。

走るように描きだす。

二人の子供は白鳥のような羽をつけて、
白い空に舞い上がる。

おかっぱの子供は天女のような着物を着ていた。

頭には大きなリボン付きのヘアバンドをつけている。

いがぐり坊主の子供は半ズボンにセーターを着ていた。

セーターは丸首のアラン模様だった。

今、
小虎が着ているのとそっくりだった。

秒速で星が描かれていく。

ねえ、
この子男の子じゃなかったの?
私はリボンがついた、
おかっぱを指差した。

小虎はこの子はみいちゃん、
とつぶやく。

でもこの子、
あんなのついていたじゃないか?
と私は笑って聞いた。

おかっぱの頭の上に噴出しが現れた。

「私、男の子に戻りたくなったわ」

小虎はじゃあ、
またお風呂に入ろう、
と独り言を言った。

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