小説『小虎』第26章 それから(4)

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美登利は高校卒業後二年程働いた後、
北京に語学留学をした。

そこで知り合ったイタリア人と結婚してシチリア島に住んでいる。

ホテルを経営しているそうだ。

直人さんは美登利とご主人のマルコさんの間に生まれた可愛い姪っ子に会いたくてしょうがないらしい。

「あいつ、
金が無いとか暇が無いとか言って全然帰ってこないんだ」
といつも文句を言っている。

何年か前にこんなことがあった。

ある日FACE BOOKの知り合いですか?
の中にMidori Ferrari を見つけた。

確かマルコさんの苗字はフェラーリだったと思ったが特になにもせずに放っておいた。

一週間ぐらいした後Midori Ferrari から友達申請が来た。

彼女のFACE BOOKを見ると、
シチリア島らしきリゾート風の写真と
小太りの日本女性と小柄な黒髪のイタリア人男性、
六、七歳ぐらいの女の子の写真が並んでいた。

これは美登利だ、
と思って私は友達申請を承認した。

「美登利ちゃん、元気ですか?」
とメッセージも添えた。

美登利から返信はこなかった。

しばらくしてから思い出して友達リストを見た。

いつの間にか美登利はリストの中から消えていた。

友達に聞いた所によると、
相手がFACE BOOKをやめるか相手にブロックされるとこうなるらしい。

車窓に常緑樹の林が迫ってくる。

青々とした緑が続いた後視界が開けて、
海が見える。

窓にきのこ型の緑の島が現れた。

島は次第に大きくなる。

線路が左に弧を描くところで島は車窓いっぱいの大きさになる。

島はやがて小さくなっていく。

見上げれば白砂神社の豊かな緑の中に赤い鳥居がちょこんと見える。

やがてそれも遠ざかっていく。

周りが寂れた市街地になった所で車内放送が響いた。

「次は白砂町!
次は白砂町!
お出口は左側です。
お降りの方はお支度をお願いします」

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