小説『小虎』第18章 突然の知らせ(2)

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「次は白砂神社、
白砂神社」

私はキャリーケースを持ち上げた。

ケンイチはボストンバッグを肩にかけて、
木張りの床のバスを降りる。

ケンイチはJRからローカル線に乗り換える駅で
この地域のガイドブックを買った。

それに白砂神社の末社の一つに学業成就に霊験あらたかな神様がいるという記事をみつけ、
ぜひ参拝したいと言い出した。

それで駅から家へと向かうバスを途中で下車し、
大学受験の成功を祈願しにいくことになったのだ。

ローカル電車の中で、
彼にガイドブックの写真を見せられた時、
そこに祖父が寄進した狛犬が映っていたので仰天した。

スーツケースを入り口のコインロッカーに預けた。

石段を登る。

社務所で二人で相談して二郎叔父の為に縁結びのお守りを買った。

馴染み深い拝殿の脇の小さな鳥居をくぐる。

丸っこい子供顔の狛犬の脇には、
前来たときはなかった、
絵馬をかける場所があった。

合格祈願の絵馬がみっしり下がっている。

売店で一つ千円の絵馬を買って、
東大合格、
第二志望は早稲田、
と二人はまったく同じ文面をフエルトペンで書いた。

絵馬を並べて結びつける。

白木の板に描かれた二匹の子馬は
いつか私が小虎に腰を支えられて乗ったポニーのように、
茶毛で脚が短く、
鬣は淡い黄土色だった。

鳥居を出た後、
ケンイチが私に、
スグルは早稲田でいいのか?
医学部ないじゃん?
と聞く。

「うん、
お爺さんも父さんも無理に跡を継がなくていい、
好きなことをすればいいって言うんだ…」

「めでたいな!
めでたいな!」

私は声のするほうに顔を向けた。

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