振り向けばコウス様は体をこごめ、
すっかり乱れた髪の下でうなだれていた。
最終手段として、
私は両足を開きしゃがみこんだ。
コウス様の腰を抱き抱え、
えいっと踏ん張って起立する。
コウス様、
見た目こそほっそりしていらっしゃるけど、
持ち上げてみれば結構重い。
右に左によたよたしながら、
なんとか足を持ちこたえさせ、
階段を降りる。
急く心で、
予定していた出口に向かうと、
「何処に行く?」
という男の声が聞こえたので、
もはやこれまでか? と思ったが、
見ればみずらも、
膝まで伸びた髭も、
真っ白な、
小柄な、
気のよさそうな爺(じじ)で、
「お嬢さん。
帰るのなら、
お米一俵を、
ちゃんともらってからじゃないとだめだよ」
と分厚く横に長い唇を、
にっこりとさせて言うので、
「この娘(こ)、
酔っ払っちゃったので、
家に置いてきてから、
また来ます」
と答えて、
堂々と門から出たのだった。