「そんなわけないでしょう!
私はあなたと露天風呂に入ったこともあるんですよ!
あなたはまごうことなき堂々たる男(おのこ)でしたよ!」
と私がいつか猿と混浴の山の中の温泉に入った時のことをもちだすと、
「あの時のコウスは実は偽コウス」
とえくぼをぺこんとへこませてあだっぽく微笑まれる。
「いいえあの時のあなたは絶対に本物のあなたです。
肩が触れたとか触れないとかで、
猿ととっくみあいの喧嘩になる人なんて、
あなたが以外誰がいるというのですか?」
姫君コウスは
「もう!
そんなつれないことをいわないで!
あなたも男でしょ?
ワタクシとこうするのが好きなはずだわ」
と私の背中に腕を回した。
とろけるような肉の感触が伝わってくる。
桃の花のような甘い香りがただよってくる。
やわらかい女の体が拘束具のように私をきつくやさしく羽交い絞めにして……
唇の隙間からざらりとした暖かいものが進入して
私の舌に巻きついたところで私はあらがうことを諦めた。
コウス様に押し倒されながらふと左の床に目をやると
枕が二つ並べられている。