翌朝姉さんが朝食の席で三郎に尋ねた。
「三郎さん昨晩はどうだったかしら?」
「月から赤ちゃんがいっぱい飛んできたけれど
皆丘の下に行っちゃったよ」
「そうか、残念だな。」
太郎兄さんが朝刊の上から顔をだす。
いつのまにか三郎と姉さんの話を聞いていたようだ。
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三郎は他にこれといったとりえのない少年だ。
勉強も、
運動も並以下。
気が弱くて弟たちにも馬鹿にされている。
しかし太郎兄さんも姉さんも三郎のこの能力にだけは一目置いていた。
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「丘の下の家に生まれれば生きていくのは大変だろう。
生まれてまもなく死んでしまう子も多いと聞く。
私の長男に生まれれば、この家の跡取り、
何不自由ない暮らしができるのに……」
太郎兄さんは悲しそうな顔をした。