【朗読台本フリー】【寝れる】三郎と月|平凡男子高生のボクは実は特殊能力もちでした。|月からこれから生まれてくる赤ちゃんが降ってくるのが見えるのです。【短編小説:6,597字】

その晩からだ。

金の玉がちょくちょくと
太郎兄さんと姉さんの眠る母屋に向かっていくようになったのは。

けれども屋根の上や庭の線路の敷いている辺りを
しばらくうろうろするだけだった。

いつだって最後には母屋から離れてしまう。

そして丘の下へ向かって行く。

丘の下に降りていく玉達は大抵十個以上が固まっている。

まるで玉同士で語りあっているみたいだ。

互いに近づいたり離れたりしながらゆっくりと降りていく。

小学校で仲良しの友達がおしゃべりをしながらのんびり歩いていくようだった。

その中の一つが仲間から離れる。

一人ぼっちの玉はしばらくその場でぐるぐると回っている。

そして兄さんたちの眠る母屋に向かって比較的早いスピード飛んでいく。

暗闇の中、
一つ光る玉は寂しげではあった。

しかし他の玉よりもずっと強い光を放っているように見えた。

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そんな光景を良く見るようにはなった。

だけどそんな玉も母屋の屋根の上や庭を数回バウンドするのが関の山だった。

丘の下に向かう玉達が完全に見えなくなりそうになると、
びゅんと音でもしそうな、
ものすごいスピードで母屋から離れる。

最後には仲間と共に丘の下へと消えていってしまう。

玩具見たさに勇気を振り絞って一人で来たものの、
仲間から遠く離れた事に気が付き急に寂しくなるのだろう。

それで急いで仲間たちの所に戻るのだろう。

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三郎は兄さんと姉さんにその話をした。

すると兄さん達は少しでもにぎやかになるように、
と一晩中寝室の窓辺にラジカセを吊るすようになった。

ラジカセには子供用のカセットテープをかけている。

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