ある夏の夜だった。
受験勉強に飽きた三郎は自分の部屋のベッドに横になっていた。
教科書を読んでいると十五分もしないうちに眠くなってしまうのはいつものことだったが
今日は特別な事情があった。
酔っ払っていたのである。
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その夜の夕食の時に隣町に住む叔父さんが遊びに来た。
三郎君ももうじき十七になるのだから少しぐらいよいだろうとワインをグラス一杯だけ飲ませられた。
その時は何ともなかったのに問題は叔父さんが帰った後だった。
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部屋に戻り教科書を開き、
しばらくすると急に目の前がくらくらとしてきた。
三郎は教科書を投げ出すとベッドに横になった。
彼のベッドは太郎兄さんが結婚前に使っていたものだ。
セミダブルでふかふかして寝心地がよい。
三郎が今まで酒を飲んだのはお正月のお屠蘇と妹のひな祭りの甘酒ぐらいだ。
まともに一杯飲んだのは今日が初めてだった。
だから酔ってはいたものの自分が酔っていると思わなかった。