翌朝太郎兄さんと姉さんにこの話をした。
二人は大喜びだった。
早速お医者さんに診てもらったが姉さんが身ごもったという兆候はなかった。
まあ昨晩のことだからといって、
暫くしてまた検査した。
こんども「残念ながら」ということだった
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また暫くして、家がちょっとした騒ぎになった。
お手伝いの少女が父親のわからない子を妊娠したのだ。
一昨年中学を卒業してすぐに三郎の家に働きにやってきた娘だ。
とりあえず丘の下の実家に帰るという話になったはずだった。
それなのに、妊娠騒ぎから大分経っても
大きくなりだしたお腹をかかえ三郎の家に留まっている。
三郎は奥手な少年だ。
自分と同い年の少女が妊娠したという話を聞いて
ただただ唖然とするばかりだった。
本人に訳を聞くなんていうことはできない。
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ある日の午後のことだ。
太郎兄さん、姉さん、
三郎の三人で親戚からもらったお菓子を食べていた。
番頭さんが店の用事で太郎兄さんを呼びに来て、
太郎兄さんを連れ一緒に外へ出ていった。
姉さんは三郎と二人きりになるとこう言う。
「あの娘のこと、
太郎さんが言い出して無事に赤ちゃんが生まれるまで家でお世話をしようという事になったのよ。
可哀想な娘でお父さんはあの娘に暴力を振るうし、
おまけに最近家が漏電で焼けてしまったんですって。
お金の計算ばかりしている人かと思っていたけど、
案外やさしいところあるのね。
私、太郎さんを見直しちゃったわ」
(終わり)
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