キユに出会ったのはもう今年で十一年になるが、
彼は出会った時からまるで年をとらないし、
一向に男くさくもならないのは不思議なことだ。
この新手(あらて)の女の子じみた格好は、
何の儀式の為だろうか?
どうして、すぐに会いにきてくれないのだろうか?
僕を取り囲んでいた人達が一人一人と去り、
僕の周りの人垣に大分隙間ができた時になって、
彼はやっと近づいてきた。
マントは肩から外され、
腕に掛けられていた。
華奢な肩に重たげな、
十連近くあるアベチュリンのネックレスの下に、
小山のような乳房が盛り上がっている。
かりっとした顎を上に傾けオレンジ色の形のよい唇を開いた。
「お兄ちゃんなら自分の部屋にいるわ」
やはり何かの儀式の準備中なのだろうか?
「よくわからないけど、
お兄ちゃんたら最近、自分の部屋で鏡ばかり見ているのよ」
確かにお兄ちゃんはきれいだから自分の顔を眺めていたら楽しいんだろうけど、
ああ毎日毎日朝から晩まで部屋にこもって鏡ばっかし見ていて、
よく飽きないものだと皆あきれているのよ、
とシアラは柳眉をしかめた。
僕が君だってきれいだよ、
とシアラの肩に手を置くと、
シアラは表情を変えないまま白目を上と下に大きく張らせた。
湖面のようにきらめく瞳孔の中に、
人形のように小さな僕がいる。