【小説】部族を食い殺す猫|ミゲルとカルロスと族長と猫【フリー朗読(声劇)台本:4000字】

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まもなくミゲルと族長の娘は結婚した。

宝石の採掘権を得たカルロスは、
宝石の貿易で大儲けし、
それを部族に還元していった。

部族の人々は宝石の収入で以前より豊かになった生活に、
大喜び。

カルロスを神様だとあがめたてまつった。

徐々に部族の経済は、
カルロスに依存するようになった。

自給自足をやめ、
みな宝石鉱山の労働者や、
カルロスの貿易会社の社員になり、
生活に必要なものは賃金で、
他部族から買うようになる。

人々は、狩りや農業より楽な仕事で、
よい生活ができるようになった、
とカルロスに感謝した。

しかし先祖代々受け継がれていた、
狩りや農業の技術は失われていった。

カルロスは、ひそかに部族の人々が、
自分たちなしでは生活できなくなるように仕向けていたのだった。

今では族長の一族も、
政治、外交すべてにおいて、
すっかりカルロスのいいなりだ。

二十年後、成長した末の若様は、
カルロスが父に猫をプレゼントした夜のことを思い出す。

そしてあの日、「この猫は今に大きくなって、僕たちを食い殺してしまう」
と恐れた自分は正しかったと、
嘆息するのだった。

【終わり】

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