まもなくミゲルと族長の娘は結婚した。
宝石の採掘権を得たカルロスは、
宝石の貿易で大儲けし、
それを部族に還元していった。
部族の人々は宝石の収入で以前より豊かになった生活に、
大喜び。
カルロスを神様だとあがめたてまつった。
徐々に部族の経済は、
カルロスに依存するようになった。
自給自足をやめ、
みな宝石鉱山の労働者や、
カルロスの貿易会社の社員になり、
生活に必要なものは賃金で、
他部族から買うようになる。
人々は、狩りや農業より楽な仕事で、
よい生活ができるようになった、
とカルロスに感謝した。
しかし先祖代々受け継がれていた、
狩りや農業の技術は失われていった。
カルロスは、ひそかに部族の人々が、
自分たちなしでは生活できなくなるように仕向けていたのだった。
今では族長の一族も、
政治、外交すべてにおいて、
すっかりカルロスのいいなりだ。
二十年後、成長した末の若様は、
カルロスが父に猫をプレゼントした夜のことを思い出す。
そしてあの日、「この猫は今に大きくなって、僕たちを食い殺してしまう」
と恐れた自分は正しかったと、
嘆息するのだった。
【終わり】