『坊ちゃん』あらすじ 感想|夏目漱石のおすすめ小説

うらなりくんの送別会

うらなり君の送別会の朝、坊ちゃんと山嵐の友情が復活します。

一度は山嵐は坊ちゃんに「骨董屋の主人が坊ちゃんを迷惑に思っているから出てほしい」と言いました。

しかし最近山嵐は、坊ちゃんが下宿でひどい態度だったというのは、骨董屋の主人がなかなか骨董を買わない坊ちゃんに腹を立てて言った嘘だということを知ったのです。

「君に失礼なことをした」と山嵐は坊ちゃんに謝ります。

坊ちゃんは何とも言わずに、山嵐の机の上に置きっぱなしだった、一銭五厘をとって、自分の財布の中に入れました。

山嵐が不審そうな顔をすると、坊ちゃんは

うんおれは君に奢られるのが、いやだったから、是非返すつもりでいたが、その後だんだん考えてみると、やっぱり奢ってもらう方がいいようだから、引き込ますんだ

と説明しました。

山嵐は大きな声をしてアハハハと笑いました。

これにて二人の友情は復活しました。(二人は先輩、後輩、上司、部下ではなくまったく対等な関係なのですね)

すっかり仲良くなった二人はこんな会話をします。

「君は一体どこの産だ」

「おれは江戸だ」

「うん、江戸っ子か、道理で負け惜しみが強いと思った」

「きみはどこだ」

「僕は会津だ」

「会津っぽか、強情な訳だ。今日の送別会へ行くのかい」

「行くとも、君は?」

「おれは無論行くんだ。古賀さん(うらなり君)が立つ時は、浜まで見送りに行こうと思ってるくらいだ」

授業が終わり送別会に行く前に坊ちゃんは山嵐を家に招きます。

そこで坊ちゃんは今回のうらなり君の転任について自分が知っていることを話します。

また自分が赤シャツに増給を断ったことも話します。

それを聞いた山嵐は坊ちゃんを褒めます。

坊ちゃんは山嵐の力こぶを触ります。

力こぶが固いことや、山嵐の「俺の腕にこよりを巻きつけて、力拳を作るとこよりが切れる」と言う話におおいに感心します。

愉快になった坊ちゃんは今夜の送別会で飲んだ後、赤シャツと野太鼓を二人で殴ってやろうか、と山嵐を誘います。

そんな、心は完全に少年な坊ちゃんに対して山嵐はもう少し大人です。

山嵐は
「今夜はまあよそう。今夜やればうらなり君に迷惑がかかる。それにどうせなぐるくらいなら、あいつらの悪い所を見届けて現場でなぐらなくちゃ」と言います。

送別会ではうらなり君を故意に遠方においやった、校長、赤シャツが「うらなり君がいなくなるのはさびしい」としらじらしい送別の言葉を述べます。

その中、山嵐の送別の言葉はこうでした。

ただ今校長始めことに教頭は古賀君の転任を非常に残念がられたが、私は少々反対で古賀君が一日も早く当地を去られるのを希望しております。
延岡は僻遠の地で、当地に比べたら物質上の不便はあるだろう。
が、聞くところによれば風俗のすこぶる淳朴な所で、職員生徒ことごとく上代樸直の気風を帯びているそうである。
心にもないお世辞を振ふり蒔まいたり、美しい顔をして君子を陥おとしいれたりするハイカラ野郎は一人もないと信ずるからして、君のごとき温良篤厚とっこうの士は必ずその地方一般の歓迎を受けられるに相違そういない

坊ちゃんは心の中で拍手します。

うらなり君は追い出されるのに、校長と教頭に、「月給を上げてくれた、いままでお世話になった」と心から感謝している様子、坊ちゃんは人のよすぎるうらなり君に同情します。

そのうち皆酔っ払って大騒ぎ、そんな中で真面目なうらなり君はかしこまって手持ちぶたさな様子。

どこまでも気の毒なうらなり君でした。

途中で芸者が登場しますが、その一人が赤シャツに挨拶します。

知り合いなのでしょうか? 赤シャツはあわてた様子で逃げていきます。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12