電車を降りてホームに降り立った。
電車の中にも私以外一人しかいなかったが、
ホームの上には誰もいない。
向こう側の上りのホームも同じだった。
空気が出てきたときよりも大分暖かくなっていたのを感じた。
もう三月なのだ。
スーツケースをごろごろさせながら、
踏み切りを渡る。
野草がぽつぽつと芽を出していた。
森閑とした駅舎に入る。
ぱちんという切符を切る音が響いた。
私は久しぶりの自由に戸惑っていた。
待ち望んでいたことなのに嬉しいというよりも
これからどうしようという思いの方が強い。
東京で試験をすべて終え、
第一志望の合格を知ったところで、
私はインフルエンザで寝込んでしまった。
二週間近く寝てすごした後に、
急いで学校に直行し卒業式に出席した。
そして今、
故郷へと戻る。
出発した時の緊張とは正反対の呆けた気分だった。
ふわふわとして何だか不安である。
もう受験勉強しなくていいだなんて信じられなかった。
バスの座席についてから、
大学に入ったって英語は必要なんだ!
とひとりごちた。
鞄から英単語帳をとりだした。
読みはじめると、
気分が落ち着いてきた。