イザナギ イザナミ|子供をたくさん産んだ国生みの神様|古事記のあらすじを簡単に

イザナギノミコトイザナミノミコト

世界の始まり

世界が始まったばかりのころ、世界はまだ混沌としていて、浮いた油がくらげのようにただような所でした。
そんな中にいた神様はみな独神(ひとりかみ……男女一対ではなくて、一人で子供を産む)で、姿かたちも、性別もない存在でした。
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、髙御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神御産巣日神(かむむすひのかみ)、宇摩志阿斯訶備比古遲神(うましあしかびひこじのかみ)、天之常立神(あめのとこたちのかみ)、国之常立神(あめのとこたちのかみ)
といった神様が日本神話の原初の神様です。
次第に男女一対の神様が登場するようになります。
宇比地迩神(うひじにのかみ)  男神 - 須比智迩神(すひじにのかみ)女神
角杙神(つのぐひのかみ)    男神 - 活杙神(いくぐひのかみ)女神
意富斗能地神(おおとのじのかみ)男神 - 大斗乃辨神(おおとのべのかみ)女神
淤母陀流神(おもたるのかみ) 男神 - 阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)女神
ちなみに
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、髙御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神御産巣日神(かむむすひのかみ)、宇摩志阿斯訶備比古遲神(うましあしかびひこじのかみ)、天之常立神(あめのとこたちのかみ)
は天つ神(あまつかみ)といって、日本神話の中でも特別な神様です。
この物語をもたない神様のリストが続いた後に、日本神話の最初の主人公が登場します。
それが伊邪那岐神(イザナギノカミ)男神 と 伊邪那美神(イザナミノカミ)女神。
日本神話で最初に物語を持つ神様が、イザナギノミコトとイザナミノミコトなのです。

おのごろ島

天つ神(あまつかみ)からの命令で、イザナギノミコト(男神)とイザナミノミコト(女神)はまだできたばかりで、水に浮いた油のような国を整えることになりました。
天つ神から授けられた天の沼矛(あめのぬほこ)をもって、天の浮橋に立ちます。
イザナギノミコトとイザナミノミコトは沼矛(あめのぬほこ)を下におろして、海をかきまわしました。
矛を引き上げると、矛から塩がしたたりおちて、島となりました。
この島はおのごろ島といいます。

女性から先に声をかけてはいけない

イザナギノミコトとイザナミノミコトはその島に降りて、大きな柱のある、立派な御殿をたてました。
おのごろ島に立派な御殿をたてると、イザナギノミコト(男神)はイザナミノミコト(女神)にこう尋ねました。

イザナギノミコト


あなたの体はどうなっていますか?

イザナミノミコト


私の体には一か所足りない所があります

イザナギノミコト


そうでしたか。
私の体には一か所余っているところがあります。
私の体の余っているところを、あなたの体の足りない所にさしてふさいで、国を産もうと思いますが、どうでしょう?

イザナミノミコト


賛成!

イザナギノミコト


それでは、私とあなたは、この柱の周りを歩いて会ったところで、結婚をしましょう。
あなたは右から歩いてきてください。私は左から行きます。

そう約束すると、さっそく二人は実行することにしました。
イザナミノミコトが柱の右側から、イザナギノミコトがが柱の左からやってきて、出会ったところでお互いに声を掛けます。

イザナミノミコト


ああ! なんて素敵な男性でしょう!

イザナギノミコト


ああ! なんて素敵な女性だろう!

イザナミノミコトは子供を産みました。
しかし生まれたのは水蛭子(ひるこ)といって不具の子でした。
二人は水蛭子(ひるこ)を葦の船に入れて、海に流してしまいました。
次に淡嶋という子をうみましたが、これも水蛭子(ひるこ)と同じ調子でした。
どうしてよい子供が生まれないのだろう……

悩んだ二人は、天つ神に相談に行きました。
天つ神は二人の話を聞くと、ふとまに(鹿の肩甲骨を焼いてひびによって判断する日本古代の占い)をしてこう言います。

天つ神


女から声をかけたのがいけなかったのじゃ。
おのごろ島に帰ってまたやりなおしなさい

国生み

イザナギノミコトとイザナミノミコトはおのごろ島に帰ると、さっそく天つ神に言われた通りにやりなおしました。
柱の両側から歩いてきて出会うと、今度はイザナギノミコトから声をかけます。

イザナギノミコト


ああ!
なんて綺麗なおとめだろう!!

イザナミノミコト


まあ!
なんてカッコいい男性でしょう!

そして二人が交わると、次々と子供が生まれます。
二人が生んだのは
  • 淡道の穂の狭別嶋(あわじのほのさわけのしま)・・・・・兵庫県の淡路島
  • 次に伊豫の二名嶋(いよのふたなのしま)・・・・・四国
    この島は体は一つで顔が四つある、愛比売えひめ(愛媛県)、飯依比古さぬひこ(香川県)、大冝都比売おおげつひめ(徳島県)、建依別たけよりわな(高知県)
  • 隠伎の三子の嶋
  • 筑紫嶋(九州)
    この島も体は一つで顔が四つあり、顔ごとに名前があります。そしてそれぞれが、筑紫国(福岡県)、豊国(福岡県東部および大分県全域)、肥国(熊本県)、熊曽国(熊本県) にあたります
  • 伊岐嶋
  • 大倭豊秋津嶋(本州)
  • 備の児嶋(岡山県の児島半島)
  • 大嶋(山口県屋代島?)
  • 女嶋(大分県姫島?)
  • 知訶嶋(長崎県五島列島)
など……

神様がぞくぞくと生まれる

島を生んだ後は二人は神様を生んでいきます。
二人が生んだのは……
大事忍男神(おおことおしをのかみ)、石土毗古神(いはつちびこのかみ)、石巣比売神(いはすひめのかみ)、大戸日別神(おほとひわけのかみ)、天之吹男神(あめのふきをのかみ)、大屋毗古神(おほやびこのかみ)、風木津別之忍男神(かざもつわけのおしをのかみ)
鳥之石楠船神(とりのいわくすふねのかみ)
大冝都比売神(おおげつひめのかみ)……
海の神、水戸(みなと)の神……
風の神、木の神、 山の神、野の神……
水戸(みなと)の神は、水の出入り口の神で、速秋津日子・速秋津比売の男女一対の神さまです。
この二柱の神様も、八の神さまを生みます。
山の神、野の神も男女一対の神様だったようで(古事記に明記はされていませんが……)二人で8柱の神様を生みました。
こうして、イザナギノミコトとイザナミノミコトはつぎつぎと神様を生んでいきます。
そして最後に生んだのは火之迦具土神(カグツチノカミ)でした。

カグツチノカミ

オギャー

イザナミノミコトは火之迦具土神(カグツチノカミ)を生んだ時に陰部をやけどしてしまし、病気になってしまいました。
病気のイザナミノミコトが嘔吐したり、大便をしてたり、小便をしたりするたびにまた神様が生まれます。
(金山毗古神、金山毗売神、波迩夜湏毗古神、波迩夜湏毗売神、弥都波能売神、和久産巣日神)

妻を亡くして悲しむイザナミのミコト。悲しみのあまり我が子を……

イザナミノミコトは病気が重くなり、ついには命を落としてしまいました。
イザナギノミコトはイザナミノミコトが亡くなってしまうと

イザナギノミコト


愛しいわが妻の命がこの一匹のせいで、なくなってしまうとは!
うわーん! 。・゚・(ノД`)・゚・。 

と冷たくなった、イザナミノミコトの枕もとにはらばいになって、脚にすがりついて、泣きました。
イザナギノミコトの流した涙からも一柱の女神が生まれます(泣沢女神 なきさわめのかみ)
イザナギノミコトはイザナミのミコトを出雲の国と伯伎の国の境にある比婆(ひば)の山に葬りました。
イザナギノミコトは、剣を抜くと愛しい妻の命を奪った、にっくきカグツチの首をはねてしまいました。

イザナギノミコト


妻のかたき!
ヽ(`Д´)ノ
バサリ!

カグツチ


ぎえええっ!

その時に噴き出た血からも神様がうまれました。
  • 刀の刃先についた血から生まれた神さま
    石析神(いはさくのかみ)、根析神(ねさくのかみ)、石筒之男神(いはつつのをのかみ)
  • 刀の刃の根本についた血から生まれた神さま
    甕速日神、樋速日神、建御雷之男神
  • 刀の柄に集まり、指の股から漏れ出した血から生まれた神さま
    闇淤加美神、闇御津羽神
やっつけられた迦具土神(カグツチノカミ)の体からも神様が生まれます。
迦具土神(カグツチノカミ)の頭、お腹、陰部、左右の手、左右の足からも神さまが一柱ずつ生まれたのでした。

イザナミノミコトに会いに行くイザナギノミコト

イザナギミコトは亡き妻に会いたいとおもって、黄泉の国行きました。
黄泉の国の入口の扉でイザナミノミコトにこう語りかけます。

イザナギノミコト


愛しい妻よ!
私とあなたが一緒に作っていた国はまだ作り終わっていません。
帰ってきてください。

イザナミノミコト


残念なことです。
もっとはやくいらっしゃったらよかったのに……
私は黄泉の国のかまどで炊いた食事を食べてしまいました。
しかし愛しいあなたがせっかく来てくださったのだから何とかしたいわ……
ちょっと黄泉の国も神様と相談してきますので、私をのぞき見してはいけませんよ。

こう言うと、イザナミノミコトは黄泉の国の中に入ってしまうとなかなか戻ってきません。
イザナギミコトは、もうこれ以上待てなくなってしまいました。
みずら(古代の男性の髪型)にさしてある、櫛を折って、それに火をともして、イザナミノミコトの姿を見てしまいました。
その姿は(゚д゚)!
うじがごそごそうごめいて、全身を八つの雷(いかづち)でおおわれています。
イザナギミコトは妻の変りはてた恐ろしい姿をみると、逃げ帰ろうとしました。
イザナミノミコトは鬼の形相でイザナミノミコトを追いかけてきます。

イザナミノミコト


私に恥をかかせましたね!
ヽ(`Д´)ノプンプン

よもつしこめという黄泉の国の醜い鬼女に夫(イザナギノミコト)を追わせます。
イザナギノミコトは、みづらから黒い蔓性植物の髪飾りを取ると、鬼女たちになげつけました。
すると髪飾りからヤマブドウがなりました。
鬼女たちがそれにむしゃぶりついているうちに逃げます。
鬼女たちは山ぶどうを食べ終わると、なおイザナギノミコトを追ってきます。
今度はイザナギノミコトはみずらにさしてある、櫛を取ると鬼女めがけて投げつけました。
櫛はタケノコに姿を変えました。
鬼女たちがタケノコを食べている間にイザナギノミコトは逃げます。
イザナミノミコトは自分の体を覆っていた八つの雷や千五百人の黄泉の国兵隊にもイザナギノミコトを追わせます。
イザナギノミコトは十拳(とつか)のつるぎを抜いて、後手で振りつつ逃げました。
黄泉の国とこの世の境目の坂でイザナギノミコトは、そこに生えていて桃をとると、黄泉国の軍隊になげつけました。
黄泉の国の軍隊は桃の霊力にやっつけられて、逃げていきました。
イザナギのミコトは桃にこう言いました。

イザナギノミコト


桃よ!
よくぞ私を助けてくれた。
お前に「おほかむづのみこと」という名前を与えるぞ。
これから私を助けたように、葦原中国(あしはらのなかつくに……地上世界、この世)の人々が苦しいとき、憂い悩むときに助けるのじゃよ。

最後にイザナミノミコトが自らイザナギノミコトを追ってきました。
イザナギのミコトは巨大な岩で、黄泉の国とこの世の境を塞ぎます。
イザナミノミコトは巨岩の向こうから、恨みの言葉を述べます。

イザナミノミコト


ヽ(`Д´)ノプンプン
愛しいあなた!
こんなことをなさるなら、これからあなたの国の人間を一日千人殺しますよ!

イザナギノミコト


愛しい妻よ!
それならば私は毎日私の国に千五百人の命を生み出すぞ!

これ以来この世では毎日必ず千人亡くなり、千五百人の赤ちゃんが生まれるようになりました。

イザナギノミコトが河で身を清めるとまたぞくぞくと神様が生まれる

イザナギノミコト


私は何と穢い国に行っていたのだろう!
これから体の禊(みそぎ)をしよう。

黄泉の国から戻ってきた、イザナギノミコトは筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原に行って、禊をはじめました。
イザナギノミコトが杖を投げ捨てると衝立船戸神という神様が生まれます。
他にも、帯、袋、衣、袴、冠等とう身に着けていたものを投げ捨てるたびに、神様が生まれます。
そして川に入り禊をすると、黄泉の国の穢れから三柱の神、黄泉の国の禍から三柱の神が生まれます。
さらにイザナギノミコトが体を洗うたびに神様が生まれます。
  • 水底で体を洗ったときに生まれた神様
    底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)、底筒之男命(そこつつのをのみこと)
  • 中ほどの深さの所で洗ったときに生まれた神様
    中津綿津見神(なかつつわたつみのかみ)、中筒之男命(なかつつのをのみこと)
  • 水の上で洗ったときに生まれた神様
    上津綿津見神(うはつわたつみのかみ)、上筒之男命(うはつつのをのみこと)

三貴子の誕生

さらにイザナギノミコトが左の眼を洗ったところ、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、右の眼を洗うと月読命(つくよみのみこと)、鼻を洗うと湏佐之男命(すさのおのみこと)が生まれます。
三人の貴い神が生まれるとイザナギノミコトは喜んでこういいました。

イザナギノミコト


私は子供を産んで、産んで、たくさん産んだ最後に三柱の貴い子を産んだぞ!

首からかけていたネックレスの玉をゆらゆらと取り外すと、天照大御神(あまてらすおおみかみ)に与えて、こう命じました。

イザナギノミコト


おまえは高天原(天上世界)を統治しなさい

アマテラス


承知いたしました。

それから月読命(つくよみのみこと)にこう命じました。

イザナギノミコト


おまえは夜之食国(よるのおすくに)を統治しなさい

そして湏佐之男命(すさのおのみこと)にはこう命じました。

イザナギノミコト


お前は海原を統治しなさい。

困ったちゃんもいるよ

天照大御神(あまてらすおおみかみ)と月読命(つくよみのみこと)はイザナギノミコトのいいつけどおり、高天原と夜之食国を統治しました。
一方、湏佐之男命(すさのおのみこと)は海の統治をしないで、あごひげが伸びてみぞおちに至るまでの長い間泣き喚きます。
佐之男命(すさのおのみこと)があまりによく泣くので、青い山が涙のための水分としてとられて、枯れてしまいます。
海や川が涙の為に水分としてとられて、干上がってしまいました。
このため、荒ぶる神の声が世界に蠅のように満ち、よろずのものの災いがことごとくおこります。

イザナギノミコト


スサノオよ……
なぜ海原を支配しないで、泣いてばかりいる?

スサノオノミコト


私は根之堅州国(ねのかたすくに)にいる母上が恋しくて会いに行きたいのです。
うえーん!!。・゚・(ノД`)・゚・。

イザナギノミコト


それならお前はこの国に住むな!
ヽ(`Д´)ノプンプン

イザナギノミコトは大変怒って、佐之男命(すさのおのみこと)を追放してしまいました。
その後イザナギノミコトは近江の多賀大社に鎮座しています。
古事記のイザナギノミコトはここで退場します。
このあとは天照大御神(あまてらすおおみかみ)、湏佐之男命(すさのおのみこと)の物語となります。
参考文献
中村啓信『新版 古事記 現代語訳付き』株式会社KADOKAWA(平成26年)