『小虎』第25章 インターネット時代【フリー朗読(声劇)台本として利用可】

1人用声劇台本まとめページ

「ただいま」

パソコンでニュースサイトを見ていると、
カチャリとアパートのドアが開いた。

妻のゆり子が入って来る。

編み込みにした髪をアップにしてビーズのへアクセサリーをつけている。

ロングブーツを脱ぎ、
フェイクファーの白いコートを取ると、
ドレスはふわふわとしたバレリーナを思わせるようなピンクのスカートだった。

いつもに増してかわいい。

高校時代の友達の結婚式だったそうだ。

ああ疲れた!
と床に大きな紙袋を置いた。

式場で使ったのをもらったの、
と紙袋からいく塊かの花束を取り出す。

根元に巻かれていたティッシュを取って、
少し茎を切り、
花瓶に生けていく。

あまり花が多いので花瓶が足らず、
コップにも生ける。

テーブルの上がカーネーションやスイトピーの花だらけになった。

冬の夜、
我が家のダイニングにだけ春が訪れたかのようだった。

「あのカップルなんだか親近感持つわ。
あの人たちもネットで知り合ったんですって」

「僕達はネットで知り合ったんじゃなくて、
小学校の時の同級生じゃないか?」

「でもSNSがなければ私達、
卒業以来二度と会わなくて、
結婚なんかしなかったわ」

1 2 3 4 5 6