【フリー朗読台本】君が地球なら僕は人工衛星【切ない、BL風味:817字】

はじめに

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本文

君が煙突なら僕は煙。
君が旗なら僕は竿。
君が地球なら僕は人工衛星。
僕たちはいつでも一緒だった。

たくさんもらったバレンタインチョコを、誰からもらったのかも確かめずに僕にくれたね。
好きないないの?と僕がきいたら、「きょーみないな」と元気よく白い歯を見せて笑ったね。

(間)

君と僕はつながれた鎖の輪。
君が中指なら僕は薬指。
僕たちはいつでも一緒だった。
彼女があらわれるまでは。

(間)

まるで迷いこんできた子猫のように、彼女はいつの間にか君に近づいた。
君のバスケの部活が始まると、彼女は毎日どこからとなく姿をみせ、フェンスごしに君をおそるおそるうかがっていた。

背の高いだったね。
肩まで垂らした風にそよぐ髪。
ミニスカートから伸びたすらりとした足。
木陰の中で明るい白いスニーカー。

意思の強そうな立派な眉。
ガラスのような細い鼻梁。
ワイン色の引き締まった唇は、いつもきっちりと結ばれていた。

長いまつげに囲まれた、釣りぎみの目。
大きな琥珀色の瞳は君をにらむように見つめていた。

(間)

「きょーみないな、うっとうしいよ」
そういう君に、僕は
「かわいいじゃん、付き合っちゃえよ」
と心にもないことを言ったね。

まもなく僕は君が彼女と笑顔で話しているのをよく見かけるようになった。
その頃からだったね、君が僕を避けるようになったのは。
「塾が忙しい」って言ってたけど、本当は彼女と会っていたのを僕は知っているよ。

そして卒業。

「いっぱい手紙書くよ」

そう言ってたくせに、5年後の結婚の知らせが、君からはじめてもらったたよりだった。

(間)

君と僕はつながれた鎖の輪。
君が中指なら僕は薬指。
君が煙突なら僕は煙。
僕たちはいつでも一緒だった。

君が旗なら僕は竿。
君が地球なら僕は人工衛星。
だけど旗は夜になれば竿からはずされ、人工衛星もいつかは地球の軌道から外れてしまう。

結婚式の二次会で君はこう言う。
「おまえが言ったから彼女とつきあうことにしたんだ」って。

「おまえがキューピッドだ」と白い歯を見せる。

僕は矢の向きを間違えたようだ。

【終わり】

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