【フリー朗読台本】神様の独り言|今は信仰されなくなった古代の神の独り言【短編:750字】

朗読(声劇)台本としてお使いになる際の注意事項 私の最後の信者が、
息をひきとる2日前、
この杉の前で手を合わせ、
首を傾けた日から何千年がたったのだろう?

かつて北の浜辺から忽然と現れ、
私の信者たちを滅ぼした、
動く帆をあやつる海賊どもは、
それから幾百年後に南の山脈から降りてきた、
鉄を持つ人々に滅ぼされた。

かつて鉄の武器をもって、
あたりいったいを支配した連中。

その侵略者たちも、
やがて西から来た鉄砲をたずさえた、
色の白い背の高い民族に、
痩せた土地においやられ、
今はみじめな生活をおくっている。

(間)

あのやせ衰えた老婆が、
私に最後の供物をささげた日から、
何千年がたったのだろう?

始めの100年は覚えていたが、
その後は数えるのを忘れてしまった。

(間)

あまりにも長く生きている私には、
1日はあっという間に過ぎてしまう。

太陽が東の空に現れた次の瞬間には、
西の地平線に沈む。

あまりにも長く生きている私には、
1月はあっという間に過ぎてしまう。

糸のような細い月は、
あくびをすればまんまるになっている。

あまりにも長く生きている私には、
1年はあっという間に過ぎてしまう。

うぐいすの鳴き声に聞きほれた後、
ひと眠りをしたら、
どさりと、雪が落ちる音で目をさます。

あまりにも長く生きている私には、
100年すらあっという間に過ぎてしまう。

私の宿る杉の木の前で遊んでいた少年が、
しばらくぶりに来たと思ったら、
あの子の玄孫だった。

(間)

年寄りの例にもれず、
最近のことはすぐに忘れてしまう。

けれども昔のことは不思議なほどに、
よく覚えているよ。

いまでも瞳をとじれば、
私に踊りをささげる若い娘の、
上向きに弧を描いた長いまつげの1本1本までもが、
くっきりと脳裏にうかぶ。

効果音
(シャンシャンシャン、ピーヒャラピーヒャラ、シャンシャンシャン、ピーヒャラピーヒャラ 古代のダンス音楽のようなにぎやかな音)

【終わり】
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フリー朗読台本【切ない】