小虎兄ちゃんいいなあ!
と言った時だった。
なあなあという鳴き声が後ろから聞こえ、
振り向いた。
私達は軽く二十匹は越える猫達に囲まれていた。
白い猫から黒い猫。
雉にトラに、
ペルシャが混じっていそうな、
毛が長いの。
スラリとした体格の、
太ったの、
痩せたのと様々だ。
猫は何処からともなく次々と沸いてくる。
台風のように渦巻いていた。
その台風の目となるのが小虎だった。
私は大好きだったはずの猫が恐ろしくなった。
小虎兄ちゃん、
と小虎を仰ぎ見て助けを求めた。
小虎は穏やかな光を放つ瞳を私に向けた。
口元は三日月のように優しく弧を描いていた。
小虎が中腰になる。
白と三毛が示し合わせたように一斉に小虎の肩から飛び降りる。
小虎の足首に赤ちゃん猫が抱きついていた。
アメリカンショートヘアと和猫の混血のような、
灰色がかったトラ柄だった。
小虎は赤ちゃん猫を抱き上げる。
小さな顔に鈴のようにくりくりの目をしていた。
黒目が白目いっぱいに広がっている。
小虎は赤ちゃん猫の雪のような白い前足を私の肩に置いた。
小虎が猫の背中から手をはずす。
猫は私の肩に乗っていた。
私は心臓がわくわくした。
まるでアニメの主人公になった気分だった。
ちび猫は私の首筋に暖かな体を擦り付けた。
小虎が私を向いて両手を広げた。
私も両手を広げる。
ちび猫が私の右の手先に向かって歩き出した。
暖かい感触と重みが手先へと移っていく。
手が重だるくなった。
小虎が私の手に両腕を添えて支える。
小虎の表情は初めて会った日のように大人びていた。
もう何もかも悟りきっている、
まるで少年の姿をした神様のような趣があった。
猫は手先まで行くとクルリとこちらを向いた。
肩に向かって戻りだす。
小虎の英知に満ちた目と、
あどけない赤ちゃん猫の黒目勝ちな瞳が一斉に私を襲った。
私が圧倒されているうちに、
白と灰色の毛皮は私の首筋をさわる。
そのまま頭に乗っかった。
重いなと思っていると反対の肩に降りた。
私の左肩に座るとそのまま止まる。
左耳にざらっとした暖かい感触が走った。
小虎がこちらを見て微笑んでいる。
私は小虎に笑い返した。
先ほどは百匹近くいるように見えた猫達は尋常な数になっていた。
だいたい十何匹ぐらいだろうか。
家の近くでもよく猫たちは、
こんな集会を開いている。