『小虎』第22章 真冬の夜【フリー朗読(声劇)台本として利用可】

1人用声劇台本まとめページ

私は立ち上がるとモックウールの紺のコートを羽織った。

ボタンを嵌めると、
ボディバッグを手に取る。

階段を降りた。

母、
二郎叔父、
妹がこっちを一斉にみて、
出掛けるの?
と怪訝そうな顔をした。

スグルちゃん、
具合が悪いんじゃないの?
と心配そうな母に、
ちょっと友達に渡すものがあって……
すぐ戻るよ!
と作り笑いをした。

二郎叔父が、
その格好じゃ寒いよ!
とタータンの襟巻きとボアの耳あてのある帽子を渡してくれた。

マフラーをしめ、
帽子を被りブーツに足を入れた所で、
二郎叔父が忘れ物!
と手袋を投げてきた。

私は商店街のバス停まで行った。

バス停には延々と列が並び、
並んでいた人がコブシの花が落ちるように、
ぽとりぽとり、
と列から外れていった。

一人が私に言った。

バス来ないよ、
この雪だからなあ!
私は商店街に行くと、
電話ボックスに広告が貼られていたタクシー会社に電話をした。

受話器から聞こえてきたのは、
全然運転手つかまらないんです、
この雪でバスのお客が皆タクシーに乗りますから、
というすまなそうな声だった。

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