「まあ!
さとみさんはお綺麗になられたこと!
スグルさんもご立派になられて!」
私も妹も彼女についてまるで記憶がなかった。
昔、
私も妹も本当に幼い頃に島の彼女の家に二週間ほど預けられたという。
母が盲腸炎で入院してオバちゃんも母の看病で忙しかった為だったという。
「ホホホ!
お二人とも小ちゃくて覚えていらっしゃらないざんしょうけど、
その頃、
宅の玄関には大きな海亀の剥製がありまして、
スグルさんはその上にお乗りになって、
浦島さんみたいに海に行くのっておっしゃって本当にお可愛らしかったわ!
オホホ!」
オバちゃんが方言丸だしだったのに比べて、
リクさんの口調は東京山の手風だった。
妹がリクさんに駆け寄った。
あの……
ちょとだけいいですか?
といってリクさんに抱きついた。
目をつむり固そうな帯の上のふんわりした所に顔を押しつける。
リクさんはあらまあ!
という顔をしていた。
妹はリクさんの背中に回した手をはずすとリクさんから体を離して
「ごめんなさい。
あんまりおシマおばちゃんに良く似ていらっしゃるからつい……」
この子は本当におシマさんに可愛がってもらったんでね、
と父が笑ってリクさんに説明した。