「ただいま」
パソコンでニュースサイトを見ていると、
カチャリとアパートのドアが開いた。
妻のゆり子が入って来る。
編み込みにした髪をアップにしてビーズのへアクセサリーをつけている。
ロングブーツを脱ぎ、
フェイクファーの白いコートを取ると、
ドレスはふわふわとしたバレリーナを思わせるようなピンクのスカートだった。
いつもに増してかわいい。
高校時代の友達の結婚式だったそうだ。
ああ疲れた!
と床に大きな紙袋を置いた。
式場で使ったのをもらったの、
と紙袋からいく塊かの花束を取り出す。
根元に巻かれていたティッシュを取って、
少し茎を切り、
花瓶に生けていく。
あまり花が多いので花瓶が足らず、
コップにも生ける。
テーブルの上がカーネーションやスイトピーの花だらけになった。
冬の夜、
我が家のダイニングにだけ春が訪れたかのようだった。
「あのカップルなんだか親近感持つわ。
あの人たちもネットで知り合ったんですって」
「僕達はネットで知り合ったんじゃなくて、
小学校の時の同級生じゃないか?」
「でもSNSがなければ私達、
卒業以来二度と会わなくて、
結婚なんかしなかったわ」