車は実家の近くを通り過ぎる。
久しぶりの故郷の町はイメージの中よりもずっと小さく安っぽい。
建物はどれももう長い間手入れがされていないらしい。
ペンキがはげていたり、
さびていたりだった。
うらわびた町を眺めつつ小虎に目を落す。
まるでふるぼけた白黒写真の中、
彼だけが高画質のカラーで写っているかのようである。
はがれかけたポスター、
蔦に覆われた廃墟、
終わりのほうの字がとれて跡のみのこっている看板、
そんな風景ばかり続く。
人気がなく、
たまに背中を丸めたお年寄りが危なっかしく歩道を歩く。
古めかしいデザインのタクシーが通る。
かつては随分立派に見えた、
島に渡る橋も今はただの古びた鉄橋だった。
オレンジ色の海の中を走っていくと、
黒い木々で覆われた島が次第に大きくなっていく。