もうじきこの家は取り壊される。
その前に、
すみずみまで映しておきたい。
私は冷え切った体でデジタルビデオを手に、
二階の端から端まで歩き回っていた。
一階から妻と妹の笑い声がする。
降りていくと、
彼女達の手元には昔の写真が散らばっていた。
古い写真を見て妹がそれを懐かしんでいるようだ。
妻だって、
隣町の出身である。
我が家の思い出の写真も彼女の郷愁を呼び起こすらしい。
ドアのベルが、
ダイヤル式電話のような古臭い音をたてた。
妻が、
はあいと返事をしながら出て行った後、
すぐに嫌そうな顔をして私を呼びに来た。
「あなた例のおがみやさんのお友達よ」