看護婦さんに傷の手当してもらった私を、
小虎は家の門まで送ってくれた。
夕日を背に小虎はまた遊ぼう、
としっかりとした声で言った。
私の手を力強く握って大きく振った。
冷たい空気の中、
小虎の手が暖かかった。
美登利の母が玄関先で、
お菓子屋の包み紙の箱を手に、
しきりに背中を倒している。
隣を通りぬけて居間で待っていたが、
なかなか話は終わらない。
母がもどってくると、
カステラもらっちゃったわ!
と私に箱を見せてくれた。
私は飴にたかる蟻のように、
母の膝によじ登り抱きついた。
母が、
美登利ちゃんに、
お帽子とコート、
あげたんですって!?
美登利ちゃんのお母さんびっくりしていたわよ!
と私の鼻をぽんと叩いた。
私が今日の出来事を話すと、
母は私を抱きしめて頭を撫でた。
濡れた顔を母のクリーム色のタオル地のエプロンに押し付けた。