小虎は鼻歌の音量を上げる。
水澄ましのようにすいすい手を動かす。
スケッチブックには立派な露天風呂が出現した。
お湯の周りには岩が置かれ湯気が立ち上っている。
二人の少年の他に、
もう一人仲間が増えた。
猿である。
子供離れした筆跡だった。
鳥獣戯画の猿のような躍動感がある。
もう画用紙には隙間はなかった。
小虎はページをめくる。
真っ白な新しいページとなった。
小虎は習字の時に筆を半紙に置くように、
クーピーを画用紙に下ろす。
走るように描きだす。
二人の子供は白鳥のような羽をつけて、
白い空に舞い上がる。
おかっぱの子供は天女のような着物を着ていた。
頭には大きなリボン付きのヘアバンドをつけている。
いがぐり坊主の子供は半ズボンにセーターを着ていた。
セーターは丸首のアラン模様だった。
今、
小虎が着ているのとそっくりだった。
秒速で星が描かれていく。
ねえ、
この子男の子じゃなかったの?
私はリボンがついた、
おかっぱを指差した。
小虎はこの子はみいちゃん、
とつぶやく。
でもこの子、
あんなのついていたじゃないか?
と私は笑って聞いた。
おかっぱの頭の上に噴出しが現れた。
「私、男の子に戻りたくなったわ」
小虎はじゃあ、
またお風呂に入ろう、
と独り言を言った。