小説『小虎』第10章 小虎と猫(1)

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小虎に引っ張られて、

階段を降りる。

左上を見上げて小虎の横顔を眺めた。

剥かれた卵のような肌がびっしりとした産毛に包まれている。

背が伸び大人っぽくなった気がする。

オレンジの合板のはまった団地の入り口の自転車置き場を抜ける。

湿った空気に混じって腐った卵のような臭いが漂った。

粗大ごみ置き場の前を通る。

革が破れて中のスポンジがはみ出した椅子や、

脚と板をばらばらに解体されたテーブルが置かれている。

アスファルトの上に白い線が引かれただけの屋根無しの駐車場を抜ける。

ようかん型の四階建ての白い建物が並んでいた。

建物の脇の上にはA-1,A-2,A-3と番号が黒いペンキで振られている。

空気は霧がかっていて何もかも、

ぼんやりと見えた。

私は小虎に手を握られ、

釣られた魚のように引きずられていく。

まったくおんなじ形で、

染みのつき方だけ違う団地の建物の合間を歩いて行く。

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