視界がぼんやりと明るくなった。
ぽうんぽうんという丸みを帯びた音が二回鳴った。
父の病院の待合室にある古い達磨型の時計の音だ。
今はお昼の二時?
夜の二時?
とつぶやくと、
大人たちがわっと私を囲んだ。
白衣を着た父に、
母、
二郎叔父に叔母までいる。
大人達がまるで法事のときみたいにいっせいに集まっている。
母の右隣では妹が眠たそうに目をこすっていた。
丸椅子に座り、
母にもたれかかるように座っている。
下を見ると真っ白なカバーの布団だ。
背中には固くひんやりしたパイプベットの背があたっていた。
母にもう!
この子は心配ばかりかけて!
と抱きつかれてキスをされた。
妹はお兄ちゃんよかったあ!
と私の頭をなでた。
そしてそのまま純白の布団につっぷすると瞬時に寝息をたてはじめた。
「小虎兄ちゃんは?」
私と小虎は石段を滑り落ちたらしく、
石段の下で気絶していたそうだ。
小虎は私を抱きかかえるようにして私の下敷きになっていた。
頭に傷があったが、
発見した二郎叔父と直人さんが声をかけると、
小虎はすぐに返事をしたという。
しばらくぼんやりとした感じだったが、
今はいつもと変わらない。
念のために、
昔溺れたときに見てもらった大学病院に検査の予約をしたらしい。
私は小虎の四肢の中で胎児のように体を丸めていたという。
体の何処にも傷はなかったがおそらくショックで気を失っていたのだろうという。