『小虎』第25章 インターネット時代【フリー朗読(声劇)台本として利用可】

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私はあっと声をあげて、
笑い出した。

「これがシンクロニシティってやつか」

私は少し前に不思議なことが大好きな会社の同僚に面白い本を借りた。

その本は「シンクロニシティ」というスイスの心理学者が提唱した神秘的な偶然の一致という概念について書かれていた。

例としてこんなものがある。

昔ある人が海外旅行に行った。

名所の前で、
娘と現地の土産売りの少年を並べて写真を撮った。

二十年後娘は国際結婚をして花婿が家に遊びに来た。

花婿が花嫁の幼少時のアルバムを見ていると、
そこに幼い頃の自分を発見した。

なんと花婿はその土産売りの少年だったのである。

他にも誕生日と死んだ日が同じだった人だとか、
人生の重要な場面で関わる番号
(例えば受験番号とか新婚旅行のホテルの部屋番号だとか)
がすべて同じの人とかについて書かれていた。

「やっぱり小虎はスピリチュアルな人だからこんなことがおこるのだろうか?
たまたまケンイチの事を考えていて小虎のことを検索したら、
小虎のホームページを作っている人も「武藤」だなんて!」

私は面白く思った。

さっそく妻に話すと、
妻が嫌そうな顔をした。

「やだ!
スグルさんたらそんなの好きなの?
変な影響受けないでね!」

妻は霊能者には嫌なイメージしかないという。

昔彼女の親戚に当たる人がある島の霊能者にすっかり依存してしまい、
家屋敷を失ってしまったという。

ホームページを一瞥すると、

「こんな風に今風にして新しい客とりこもうとしてるのよ!
スグルさん絶対にこんなのに騙されないでね!」
と私に念を押した。

妻によればケンイチと小虎のホームページを作っている人が同じ苗字でも
不思議でもなんでもないという。

武藤姓は私と彼女の出身地辺りには非常に多いそうだ。

ケンイチの父が聖コロンバ学園、
白砂町校の出身だったならば、
おそらくケンイチの家系もあの地域の出だろう。

妻の叔母が住んでいた、
私の実家から少しバスで行った集落はあたり一帯の表札がすべて「武藤」だという。

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