オオゲツヒメノカミ|かわいそうな穀物と蚕の起源女神|古事記と日本書紀のあらすじを簡単に

月読命

穀物の起源となった女神、オオゲツヒメノカミの神話は稲作や養蚕の起源を説明したちょっとシュールな物語。

命を奪われた女神が穀物の起源となるという善悪や倫理観が入り込む隙間のない、荒唐無稽なストーリーが、原始的。

儒教や仏教の影響を受ける前の古い時代の人々の考え方を垣間見せてくれます。

古事記 オオゲツヒメノカミとスサノオ

乱暴もののスサノオノミコトは高天原で狼藉をした結果、ついに追放されました。

スサノオは母のいる根の国に行く途中に大気都比売神(オオゲツヒメノカミ)を訪れました。

オオゲツヒメノカミはスサノオに美味しい者をたくさんご馳走をします。

しかしスサノオがふと、料理を準備中の台所を覗くと、オオゲツヒメノカミが鼻、口、尻から汚物を吐き出しているではないですか!

どうやらオオゲツヒメノカミは自分の体から出したものを料理して、スサノオに美味しいものをご馳走しているようでした。

スサノオ


よくも、そんな、きたないものを俺にくわせたな!
ヽ(`Д´)ノプンプン
ぐさッ!

怒りっぽいスサノオはオオゲツヒメノカミの命を絶ってしまいました。

そのなきがらから、つぎつぎと蚕や穀物が生まれます。

頭から蚕が生まれ……

目から稲の種が生まれ、耳からは粟が生まれ……

鼻からは小豆が生まれ……

ホトからは麦が生まれ……

尻からは大豆が生まれました。

スサノオは、乱暴者の彼らしく、かっとなって、せっかくごちそうしてくれたオオゲツヒメノカミを殺してしまいます。

けれども、後でスサノオにばちがあたったりするわけではありません。

むしろ、女神のなきがらから穀物や蚕が生まれるというめでたい結果になります。

血なまぐさいシーンがありながらも、誰が悪いともいっていない、現代人にはちょっと不思議なストーリーですね。

日本書紀 ツクヨミとウケモチ

日本書紀には古事記のスサノオとオオゲツヒメノカミの物語とそっくりなお話がありますが、登場人物が変わっています。

スサノオ役がツクヨミノミコトになっているのです。

さて、ツクヨミとは誰でしょう?

ツクヨミノミコトはイザナギノミコトが黄泉の国から帰ってきた後、みそぎをして生んだ三貴子のうちの二番目の子供ですね。

詳しくはこちらをご覧ください。

イザナギ イザナミ|子供をたくさん産んだ国生みの神様

イザナギ イザナミ|子供をたくさん産んだ国生みの神様 三貴子の誕生

天上にいるアマテラスオオミカミが弟のツクヨミノミコトに命じました。

アマテラス


葦原中津の国に保食神(ウケモチノカミ)がいると聞いている、行って見てきておくれ

ツクヨミはアマテラスの命令をうけて葦原中津の国に折りて、保食神(ウケモチノカミ)を訪ねます。

ウケモチは首を回すと口からご飯を噴出します。

ウケモチが海に向かうと口から大小の魚を吐き出します。

ウケモチが山に向かうとさまざまな動物を口から吐き出します。

こうして口から吐き出した食材をつかって、ウケモチはツクヨミノミコトにおもてなしします。

ツクヨミノミコト


どうしてこんな汚いものをおれに出すのか!?  ヽ(`Д´)ノプンプン
ぐさっ!

怒ったツクヨミはウケモチを斬ってしまいます。

その後天上に戻った月夜見はこのことを姉のアマテラスに報告すると

アマテラス


おまえは悪い神じゃ!

もう顔もみたくない! ヽ(`Д´)ノプンプン

と激おこです。

それ以来、アマテラスとツクヨミは昼と夜とに分かれて暮らすようになり、お互い顔を合わせることがなくなりました。
天照大神月読命

 

 

 

その後アマテラスは天熊人という別の人を派遣して、ウケモチを見に行かせました。

ツクヨミに切られたウケモチはすでにこと切れていました。

しかしその頭は牛や馬になり

額の上には粟が生え

眉の上には繭が生え

眼の中には稗が生え

腹の中には稲が生え

ホトには大小の小豆と麦が生えていました。

ウケモチは女性だったんですね、(゚д゚)!

天熊人はこれをすべて持ち帰りアマテラスに献上すると、

アマテラスは大喜びです。

アマテラス


これらは人民が食べて命をつなぐためのものである。
!(^^)!

アマテラスは粟、稗、麦、豆を畑の種にして、稲を水田の種にしました。

そして村長を決めて、水田に植えて稲作をさせます。

そしてその秋、稲の穂先が長く垂れて、黄金色にたなびきます。

アマテラスはご機嫌です。

アマテラス


めでたや(⌒∇⌒) めでたや(⌒∇⌒)

またウケモチのなきがらの眉から生まれた繭を口に含むと、糸がとれました。

ここから養蚕が始まりました。

オオゲツヒメとウケモチ まとめ

穀物の起源となった女神、オオゲツヒメの神話は稲作や養蚕の起源を説明したちょっとシュールな物語。

このような、何かの起源について説明する話は、日本神話のなかでは珍しい。

古事記も日本書紀も天皇の正当性や天皇の先祖の物語を語ることに主軸が置かれていて、万物の起源の説明についての話は少ないです。

イザナギノミコトとイザナミノミコトが日本列島を作った後、人民はいつの間にか生まれているし、自然もいつの間にか出来上がっています。

そんな中、オオゲツヒメの穀物や、蚕の起源を説明した神話は異色なものとなっています。

女神のなきがらが穀物の起源となるという善悪や倫理観が入り込む隙間のない、荒唐無稽なストーリーが、原始的。

儒教や仏教の影響を受ける前の古い時代の人々の考え方を垣間見せてくれます。