小説『小虎』第11章 先客(1)

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私はその日以来、
遊ぶ友達に悩まなくなった。

竹中さんや、
仲良しの女の子に誘われた時は、
意地悪な子も一緒でない事を確かめると二つ返事で応じた。

放課後まで遊ぶ友達が見つからない時は仕方なく一人で家路に向かう。

家に帰ると二郎叔父がいて、
どこか連れて行ってくれると言えば、
大喜びでついていった。

二郎叔父も家にいなく、
親戚やいとこが遊びに来てもいず、
子ども会のお芝居や映画もないような日も時にはある。

そんな時も私はもう独りぼっちになる心配はなかった。

小虎の家へ行けばいいのだ。

学校の友達と遊ぶには約束が必要だ。

けれども小虎には事前に予約する必要なんて無かった。

私がふらりと小虎を尋ねればいつだって彼は私を待っていた。

小虎の部屋にはうず高くスケッチブックが積み上げられていた。

スケッチブックの中には小虎と「みいちゃん」の友情の歴史が延々と記されていた。

小虎が青いクーピーを握り締めて、
スケッチブックに飛び込むようにクーピーの先を置く。

私も緑色のクーピーを手に、
スケッチブックの小虎の傍らに、
自画像を書き添えた。

みいちゃんはしばしば遊びに来てくれた。

三人の子供達は白い画面の中で温泉に入ったり、
星空を舞ったり、
山を駆け巡ったりした。

みいちゃんはその日の気分で男の子になったり女の子になったりできる。

三人の腕白な少年が猿のように大暴れする日もあった。

女王のように、
りんとした少女に二人の少年が弟のように従う日もあった。

みいちゃんはしばしば気まぐれを起こして月の世界へと帰ってしまう。

そういう日は白砂神社の脇にある小さな社の猫達を訪ねる。

耳の大きな三毛やでぶの白がいつもすりよってくる。

最初は小虎にだけだったが、
次第に顔を覚えてくれたのか、
私にもよってくるようになった。

それを膝に乗っけたり肩に乗せたりした。

ある時、
あの日私の肩に乗った灰色の子猫が大分成長した姿で現れた。

残念ながら、
若猫になった彼はメスの取り合いに夢中で私には目もくれない。

恋敵に向けって威嚇する甲高い声は弦楽器の調律のように不安定で、
気味が悪かった。

私は遠くから毛を逆立て相手に挑む彼を、
こわごわ眺めているだけだった。

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