準備はちゃくちゃくと
皇后は諸国に命じ船舶を集めて、兵士を訓練させました。
しかし兵士の集まりがよくありません。
そこで皇后は大三輪社(おおみわのやしろ)を立て、刀、矛を奉ると兵士が自然と集まりました。
皇后は使者に命じて西の海に国があるかどうか視察させました。
使者は西の海にでかけて、「国は見えません」と言いました。
また別の使者を西の海に派遣するとこう言います。
(使者)
西北の海上はるかに山が見え、雲が横たわっています。
西北の海上はるかに山が見え、雲が横たわっています。
きっとその下に、国があるものと思われます。
皇后は戦争の心構えを群臣に言い渡します。
鐘鼓の音が乱れる時には秩序を失い、標識の軍旗が乱れる時には、士卒を統率することはできない。
財物を貪り欲深くなり、私事のみを思い妻妾のことに心が奪われると、必ず敵のために虜にされるだろう。
よいか、敵は少なくとも、決して侮ってはならぬ。敵が強くとも、屈してはならぬ。
婦女を暴行する者を許してはならぬ。降服してくる者を殺してはならぬ。
もし戦いに勝ったならば、必ず恩賞を与えよう。
戦場で逃亡するようなことがあったならば、厳罰が下されるだろう。
(宮澤 豊穂訳『日本書紀 全訳【上巻】』ほおずき書籍)
さて、皇后はそのとき臨月でした。
皇后は石を取って腰に挟み、
事をなし終えて帰って来るその日に、ここで生まれますように
と祈りました。